【大田区・大森の動物病院】犬と猫の急性膵炎を獣医師が徹底解説

執筆:イース動物病院 院長 芹沢和也


はじめに

大田区・大森・蒲田エリアの飼い主の皆さまへ。イース動物病院院長の芹沢和也です。

日々の診療において、犬や猫が突然の嘔吐や食欲不振、元気消失を訴えて来院されるケースに頻繁に遭遇します。その背後に潜む重大な疾患の一つが「急性膵炎(きゅうせいすいえん)」です。急性膵炎は、膵臓が分泌する消化酵素が膵臓自身を消化してしまう「自己消化(じこしょうか)」を引き起こし、重篤な全身性の炎症を招く危険な病気です。初期症状が他の軽い胃腸炎と酷似しているため見過ごされがちですが、発見が遅れると命に関わることも少なくありません。

大森町・大森西・蒲田・品川・川崎など広いエリアから多くの患者さんが来院される当院でも、急性膵炎は外来診療において決して珍しくない疾患です。本記事では、飼い主の皆さまが愛犬・愛猫の異変にいち早く気づき、適切なタイミングで動物病院を受診できるよう、急性膵炎の症状から最新の診断・治療法、そして退院後のケアまでを、科学的根拠(EBVM:エビデンスに基づく獣医学)に基づいて詳細に解説いたします。


1. 臨床兆候

急性膵炎の症状は、軽度の不調から命に関わる重篤な状態まで様々です。飼い主の皆さまが自宅で気づけるサインを見逃さないことが、早期発見の鍵となります。ここでは、犬と猫で発症頻度の高い順に症状を解説します。

1-1. 早期に現れる症状

犬の場合、最も早く現れるのは食欲不振(フードを残す、においを嗅いで離れる)と元気消失(いつもより動きたがらない、散歩を嫌がる)です 1。これらに続いて、嘔吐が頻繁に見られるようになります。嘔吐は食後に限らず、空腹時にも黄色い液体(胆汁:たんじゅう)を吐くことがあります。

猫の場合、嘔吐の頻度は犬ほど高くなく、ただ「じっとうずくまって動かない」「ご飯を食べない」という非特異的な(特定の病気を示さない)症状が主体となるため、発見が遅れがちです 2。猫の急性膵炎の診断が難しい理由の一つは、この症状の「曖昧さ」にあります。

1-2. 進行に伴い現れる症状

病状が進行すると、犬では激しい腹痛が現れます。特徴的なサインとして、前肢を伸ばして胸を床につけ、後肢を立てた「祈りのポーズ」をとることがあります。これは、腹部の痛みを和らげようとする姿勢です。また、下痢や、嘔吐・下痢に伴う重度の脱水症状(皮膚をつまんで離してもすぐに戻らない、歯茎が乾いている)が見られるようになります 1

猫では脱水が高頻度(約77%)で認められ、また体温が正常より低くなる「低体温(ていたいおん)」が重症例の約68%で見られます。これは犬とは異なる猫特有の重要な所見です 2

1-3. 緊急性の高い症状(すぐに受診すべきサイン)

膵臓の炎症が全身に波及すると、SIRS(全身性炎症反応症候群:全身の血管や臓器に炎症が広がった状態)と呼ばれる危険な状態に陥ります。以下のような症状が現れた場合は、一刻を争う事態です。大田区の動物病院である当院へ、またはすぐに受診可能な救急病院へ直ちにご相談ください 1 28

呼吸が荒い・速い、ぐったりして呼びかけに反応しない、歯茎や白目が黄色くなる(黄疸:おうだん)、体温が異常に低い(特に猫の重症例)、といった症状は、重篤な全身性合併症のサインです。

▼ 【図表①:臨床兆候の出現頻度】

臨床兆候出現頻度(犬)出現頻度(猫)飼い主が気づくポイント
食欲不振・食欲廃絶約90%約84%フードを残す、においを嗅いで離れる
元気消失・沈鬱約90%約100%いつもより動きたがらない、おもちゃに反応しない
嘔吐約90%約35〜52%食べたものや黄色い液体(胆汁)を何度も吐く
腹痛約58%約25〜30%抱っこを嫌がる、お腹を触ると鳴く、祈りのポーズをとる
脱水約46%約77%皮膚の張りがなくなる、目がくぼむ、歯茎が乾く
低体温まれ約68%体が冷たい、震えている
黄疸約26%約6〜64%白目や歯茎、耳の内側の皮膚が黄色っぽくなる
下痢約33%約15%軟便や水様便が続く

※数値は複数の論文データを統合した概算値です 1 11


2. 鑑別疾患

急性膵炎の症状(嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛など)は、他の多くの消化器疾患や内臓疾患と非常に似ています。そのため、これらの類似疾患(鑑別疾患:かんべつしっかん)を一つひとつ除外することが、正確な診断において極めて重要です。誤った診断に基づき治療を行うと、病状を悪化させる危険性があります。

特に猫では、「トライアダイティス(三臓器炎:膵炎+炎症性腸疾患+胆管炎が同時に起こる状態)」と呼ばれる複合的な疾患が知られており、複数の臓器が同時に炎症を起こすため、診断と治療がより複雑になります 3。また犬でも、高脂血症(血液中の脂肪分が異常に高い状態)が膵炎のリスク因子となることが知られています 10

▼ 【図表②:主要な鑑別疾患の比較】

疾患名共通する症状本疾患(急性膵炎)との主な違い鑑別に有用な検査
急性胃腸炎嘔吐、下痢、食欲不振膵炎ほどの激しい腹痛や全身状態の悪化を伴わないことが多い。膵臓は正常超音波検査(膵臓は正常)、Spec cPL(正常値)
消化管内異物(腸閉塞)頻回の嘔吐、腹痛、食欲廃絶異物による物理的な閉塞がある。膵臓自体には炎症がないX線検査、超音波検査(異物や腸管の拡張を確認)
肝疾患(急性肝炎・胆管炎)嘔吐、黄疸、元気消失肝酵素の著しい上昇が主体。猫ではトライアダイティスとして膵炎と併発することがある血液生化学検査(ALT、AST、GGT等)、超音波検査
副腎皮質機能低下症(アジソン病)嘔吐、下痢、虚脱、脱水電解質異常(ナトリウム低下、カリウム上昇)が特徴的。ストレス時に悪化しやすい血液生化学検査(電解質)、ACTH刺激試験
急性腎障害(AKI)嘔吐、食欲不振、元気消失腎臓の数値(BUN・クレアチニン)が著しく上昇。尿量の異常を伴う血液生化学検査(BUN、Cre)、尿検査、超音波検査
腹膜炎激しい腹痛、嘔吐、発熱腹腔内に自由液体が貯留し、腹部全体に激しい痛みが広がる腹部超音波検査(腹水の確認)、腹水検査

※論文データに基づき作成 2 26


3. 検査と診断アプローチ

大森町の動物病院である当院では、急性膵炎の診断において、身体検査から始まり、血液検査、画像診断を組み合わせた総合的なアプローチ(除外診断)を行っています。単一の検査だけで確定診断を下すことは難しいため、複数の所見をパズルのように組み合わせて判断します 9

▼ 【図表③:診断フローチャート】

【STEP 1】問診と身体検査
  └─ 症状の経過・食事内容(高脂肪食や誤食の有無)を確認
  └─ 腹部触診:右前腹部の痛み・腫瘤の有無
  └─ 脱水・黄疸・体温の評価
      ↓ 異常あり・膵炎を疑う場合
【STEP 2】一次検査(血液検査・X線検査)
  └─ CBC(全血球算定):白血球数・血小板数の確認
  └─ 血液生化学:肝・腎数値、電解質、血糖値の評価
  └─ X線検査:消化管内異物・消化管穿孔などの外科的疾患の除外
      ↓ 膵炎が疑われる所見あり
【STEP 3】特異的検査
  └─ Spec cPL(犬)/ Spec fPL(猫):膵特異的リパーゼ測定
  └─ 腹部超音波検査:膵臓の腫大・エコー変化・周囲脂肪の炎症確認
      ↓ 総合的に急性膵炎と診断
【STEP 4】重症度評価と治療開始
  └─ CAPSスコア(犬)などで重症度を評価
  └─ 入院による積極的支持療法の開始
      ↓ 診断困難・腫瘍との鑑別が必要な場合
【STEP 5】二次検査(必要に応じて)
  └─ CT検査・膵臓生検(病理組織学的検査)

3-1. 身体検査のポイント

まずは視診(目で見る)、触診(手で触れる)、聴診(音を聞く)を行います。脱水の程度(皮膚の弾力低下、粘膜の乾燥)、黄疸の有無(白目や口腔粘膜の黄染)、そして最も重要な腹部の触診による痛みの有無(特に右前腹部、膵臓が位置する場所)を慎重に確認します。腸蠕動音(ちょうぜんどうおん:腸が動く音)の低下や消失は、麻痺性イレウス(まひせいいれうす:腸の動きが止まった状態)の合併を示唆します。

3-2. 一次検査

■ 血液検査(CBC:全血球算定・生化学検査)

CBC(全血球算定)では、炎症を示す白血球数の増加(約50〜60%の症例で確認)や、脱水による赤血球容積率(PCV:ピーシーブイ、血液中の赤血球の割合)の上昇が見られます。重症例でDIC(播種性血管内凝固症候群:全身の血管内で微小な血栓が多発する状態)を併発している場合は、血小板の著しい減少が認められます 1

生化学検査では、併発する肝障害や胆管閉塞により、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ:肝細胞の障害を示す酵素)やALP(アルカリホスファターゼ:胆管系の障害を示す酵素)などの肝酵素の上昇、高ビリルビン血症(黄疸の指標)が高頻度で見られます。また、犬ではCRP(C反応性蛋白:シーアールピー)、猫ではSAA(血清アミロイドA)といった急性期タンパク質(炎症マーカー)の上昇が確認されます 1。低アルブミン血症(アルブミン:血液中の主要なタンパク質が減少した状態)は重症化のサインであり、CRP/アルブミン比の上昇は死亡リスクと相関することが近年の研究で示されています 29

■ 膵特異的リパーゼ(Spec cPL / Spec fPL)

膵臓から血液中に漏れ出したリパーゼ(消化酵素の一種)の量を特異的に測定する検査です。犬のSpec cPLは、中等度から重度の膵炎において約71〜82%の感度(病気を見つける確率)と、約86〜100%の特異度(他の病気と間違えない確率)を持ち、現在の獣医療において非常に信頼性の高い血液検査の一つです 6 19。猫のSpec fPLも同様に有用であり、感度約67〜79%、特異度約67〜100%と報告されています 2

■ X線(レントゲン)検査所見

X線検査は、膵炎自体の診断よりも、異物誤飲などの外科的疾患を除外するために行います。

撮影体位と部位:右側臥位(右を下にした横向き)、左側臥位、腹背位(仰向け)の3方向で腹部全体を撮影します。

特徴的なX線所見:急性膵炎の場合、X線画像では以下のような変化が見られることがあります。

  • 右前腹部(膵臓がある位置)の軟部組織濃度の上昇(白っぽくもやもやして見える)
  • 漿膜面(臓器の輪郭線)の不鮮明化
  • 幽門十二指腸角(胃と腸の間の角度)の拡大や、胃・十二指腸の変位(押しやられている)
  • 腸管のガス貯留(腸の動きが悪くなることで起こる)

出現頻度と注意点:これらの所見が現れる頻度は低く、重症例であってもX線画像で膵炎に一致する所見が認められるのは約25%以下と報告されています 26。X線画像が正常に見えても急性膵炎を否定することはできません。

■ 超音波(エコー)検査所見

超音波検査は、膵臓の形態的な変化を直接観察できる非常に有用な検査であり、大森西の動物病院である当院でも積極的に活用しています 14

評価部位・プローブの当て方:仰向けまたは横向きの状態で、右前腹部(十二指腸の横)から左前腹部(胃の後ろ)にかけてプローブ(超音波を当てる器具)を走査し、膵臓の右葉・体部・左葉を評価します。膵臓は胃や腸の後ろに位置するため、消化管内のガスが邪魔をして見えにくいことがあります。

特徴的なエコー所見:急性膵炎では以下の所見が認められます。

  1. 膵臓の腫大:膵臓の厚みが増し、正常より大きく見えます(正常では厚さ約1cm以下)。
  2. 膵臓実質の低エコー化(炎症や浮腫、壊死により、正常より暗く黒っぽく見える):これは膵臓の組織が炎症で破壊されていることを示します。
  3. 周囲の腸間膜の高エコー化(膵炎によって周囲の脂肪が炎症を起こし、白く明るく見える):この所見は感度が高く、最も検出されやすい所見の一つです 25
  4. 膵臓の辺縁不整:膵臓の輪郭が不規則になります。
  5. 腹水(ふくすい):膵臓の周囲に液体が貯留し、無エコー(黒い液体)として観察されます。
  6. 造影超音波(CEUS)およびドプラ所見:最新の研究では、造影超音波検査を用いると、膵炎の部位では造影剤の到達が遅れ(Peak Timeの延長)、造影剤が蓄積して白く光る(Peak IntensityとAUCの増加)ことが確認されています。一方、組織が完全に壊死している部分は無エコー(血流がない黒い領域)として観察されます 36

出現頻度と注意点:重症例での感度は約68〜89%と報告されています 13。しかし、軽症例では膵臓が正常に見える(等エコー:周囲と同じ明るさ)ことも多く、見落としやすいポイントです。超音波検査単独での診断は避け、必ずSpec cPLや臨床症状と組み合わせて総合的に判断することが重要です 25

▼ 【図表④:各検査の主要所見サマリー】

検査の種類主要な所見出現頻度(%)臨床的意義
CBC(全血球算定)白血球増多、PCV上昇、血小板減少(重症)約50〜60%全身性の炎症、脱水、DIC合併の評価
血液生化学ALT・ALP上昇、高ビリルビン、低アルブミン約40〜60%肝障害・胆管閉塞の併発、重症度の評価
膵特異的リパーゼ(Spec cPL)200μg/L以上で陽性(犬)約71〜82%膵臓実質の破壊・炎症を特異的に示す最重要検査
CRP(炎症マーカー)上昇(犬)、SAA上昇(猫)約80%以上炎症の程度・重症度・治療反応性の評価
X線検査右前腹部の不透過性亢進、腸管ガス貯留約25%以下主に消化管内異物・穿孔などの外科的疾患の除外
超音波検査膵臓の低エコー化、周囲脂肪の高エコー化、腹水約68〜89%膵臓の局所的な炎症・浮腫・壊死を視覚的に捉える

※論文データに基づき記載 6 24 26

3-3. 二次検査・確定診断のための特殊検査

通常は上記の検査で臨床診断を下しますが、診断が困難な場合や、膵臓腫瘍との鑑別が必要な場合には、CT検査(コンピュータ断層撮影:より詳細な断層画像の取得)や、開腹下または腹腔鏡下での膵臓の生検(組織の一部を採取して顕微鏡で調べる病理組織学的検査)を行うことがあります。病理検査は確定診断の「ゴールドスタンダード(基準)」ですが、麻酔のリスクを伴うため、慎重に適応を判断します。高度な設備が必要な場合は、二次診療施設へご紹介することもあります 1


4. 治療の提案

急性膵炎に対する「特効薬」は現在のところ存在しません。治療の基本は、膵臓の血流を回復させ、痛みを和らげ、合併症を防ぐための「支持療法(対症療法)」となります。イース動物病院では、最新のエビデンスに基づき、以下のプロトコルを推奨しています。

4-1. 内科的治療

積極的な静脈内輸液療法は、急性膵炎治療の根幹をなします。膵臓の微小循環(細い血管の血流)の低下を防ぎ、脱水を補正するために、乳酸リンゲル液などの等張晶質液(とうちょうしょうしつえき:体液と同じ浸透圧の点滴液)を静脈内に投与します。適切な輸液管理は、急性腎障害(AKI)などの重篤な合併症を防ぐためにも不可欠です 11

鎮痛管理(ちんつうかんり)も極めて重要です。膵炎は激しい痛みを伴うため、痛みのコントロールを怠ると、痛みそのものがストレスとなり病状を悪化させます。オピオイド(医療用麻薬:ブトルファノール、メサドンなど)を第一選択とし、必要に応じてケタミンやリドカインの持続点滴(CRI:シーアールアイ、一定の速度で点滴し続けること)を追加する多角的な鎮痛アプローチを行います 11

制吐薬(せいとやく)として、マロピタント(商品名:セレニア)を第一選択として使用します。マロピタントはNK1受容体拮抗薬(エヌケーワンじゅようたいきっこうやく)と呼ばれる薬で、脳の嘔吐中枢と消化管の両方に作用して吐き気を強力に抑えます。さらに、膵臓内の炎症を抑制する作用も期待されています 11

4-2. 栄養管理(早期経腸栄養)

かつては「膵臓を休ませるために絶食絶水」が常識とされていましたが、現在では「早期の経腸栄養(けいちょうえいよう:口やチューブから胃腸に栄養を入れること)」が強く推奨されています。発症から48時間以内に低脂肪の流動食を与え始めることで、腸管の粘膜バリア機能が保たれ、腸内細菌が血液中に侵入するのを防ぎ(細菌性転位:さいきんせいてんい)、回復が早まることが複数の研究で示されています 11 30。自力で食べられない場合は、鼻や食道から細いチューブを入れて栄養を投与します。

4-3. 外科的治療の適応

内科的治療に反応せず、膵臓の巨大な膿瘍(のうよう:膿のたまり)や壊死(えし:組織が死んでしまうこと)、胆管の完全な閉塞が認められる場合には、外科的な洗浄やドレナージ(管を入れて排液する処置)、胆管バイパス手術が必要になることがあります。このような場合は、二次診療施設への紹介をご提案いたします。

▼ 【図表⑤:推奨治療プロトコル】

治療の種類薬剤・処置名目的・用法投与期間の目安エビデンスレベル
輸液療法乳酸リンゲル液等の等張晶質液膵臓の血流維持、脱水補正。静脈内点滴臨床症状が改善するまで高(標準的治療)
鎮痛薬ブトルファノール、メサドン、ケタミンCRI腹痛の緩和。状態に応じ注射や持続点滴疼痛が消失するまで高(痛みの管理は必須)
制吐薬マロピタント(NK1受容体拮抗薬)嘔吐の抑制、早期の食事再開を促す嘔吐が消失するまで
早期経腸栄養低脂肪療法食・流動食(経鼻チューブ等)腸管バリア機能の維持。発症後48時間以内に開始退院後も継続高(近年強く推奨)
胃酸分泌抑制オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬)等胃潰瘍や食道炎の予防・治療消化器症状が強い間中(消化器症状が強い場合)
抗菌薬アモキシシリン・クラブラン酸等感染性膵炎・敗血症が疑われる場合のみ感染が消失するまで低〜中(適応を慎重に判断)

※論文データに基づき記載 11 30


5. 予後

このセクションでは、急性膵炎の予後(今後の病状の見通し)について、統計データを用いて詳しく解説します。飼い主の皆さまが今後の見通しを具体的にイメージできるよう、最新の研究データを提示します。

5-1. 治療反応性と生存期間

全体的な死亡率は27〜58%と報告されていますが、これは大学病院などの二次診療施設(重症例が集まる病院)のデータを含んでいます 9 21。一般の動物病院を受診する軽症例の死亡率はこれより低く、早期に発見し、適切な輸液と痛みの管理を行えば、軽症例の多くは2〜3日の入院治療で回復します。

一方、重症例では予後が大きく異なります。2025年のChawanlawuthiらによる最新の研究(146例の犬を対象)では、全体的な死亡率は39.72%でした。特に急性腎障害(AKI)を合併した群では死亡率が最も高く、生存期間の中央値(MST:統計上の半数の患者が生存した期間)はわずか4日(95%信頼区間:0.0〜11.7日)という厳しい結果が報告されています 37。また、猫の急性膵炎の歴史的な死亡率は約59%と高かったものの、近年の診断技術の向上と早期治療の普及により改善傾向にあるという報告があります(※具体的な改善率については施設によりばらつきがあるため要確認)2

5-2. 予後を左右する因子

近年、犬の急性膵炎における予後予測スコア「CAPSスコア(Canine Acute Pancreatitis Severity score:犬急性膵炎重症度スコア)」の研究が進んでいます。Fabrèsら(2019年)が開発・検証したこのスコアは、SIRS、凝固異常、クレアチニン上昇、低イオン化カルシウム血症を組み合わせることで、AUC(曲線下面積:予測精度の指標、1に近いほど精度が高い)0.92という非常に高い精度で短期死亡を予測します 28

▼ 【図表⑥:予後因子の比較】

分類予後因子根拠となる論文・データ
良好な予後因子早期(48時間以内)の経腸栄養の実施Mansfieldら(2011)18:腸管バリア機能の維持による合併症の減少と回復の促進
良好な予後因子初期治療への迅速な反応(嘔吐の消失、食欲回復)臨床的観察に基づく一般的な予後良好サイン。重症化リスクの低下を示す
良好な予後因子診断時のSpec cPL値が比較的低いCridgeら(2020)25:膵特異的リパーゼの濃度が重症度と相関する
不良な予後因子SIRS(全身性炎症反応症候群)の併発Fabrèsら(2019)28:CAPSスコアの独立した死亡予測因子(感度89%、特異度90%)
不良な予後因子AKI(急性腎障害)の併発Chawanlawuthiら(2025)37:AKI合併群の中央生存期間は4日と極めて短い
不良な予後因子HCT(ヘマトクリット)の低下Chawanlawuthiら(2025)37:独立した死亡予測因子(ハザード比0.967、p=0.019)
不良な予後因子BCR(BUN/クレアチニン比)の上昇Chawanlawuthiら(2025)37:独立した死亡予測因子(ハザード比1.024、p=0.006)
不良な予後因子低イオン化カルシウム血症Kimmelら(2001)22、Fabrèsら(2019)28:短期間での死亡を予測する独立因子
不良な予後因子CRP/アルブミン比の高値Guglielminiら(2022)29:炎症と栄養状態の悪化を示す指標

5-3. 飼い主が自宅でできるケアとQOL(生活の質)の維持

退院後も、膵炎の再発を防ぐためのケアが重要です。特に犬では、厳格な低脂肪食の給与が再発防止の最重要ポイントです。脂肪分が膵臓を刺激し、膵炎を再発させるリスクがあるため、人間の食べ物や高脂肪なおやつ(チーズ、肉の脂身、揚げ物など)は絶対に与えないでください 5

また、肥満は膵炎の重要なリスク因子であるため、適正体重の維持を心がけましょう。定期的な体重測定と、かかりつけの動物病院での体型評価(BCS:ボディコンディションスコア、見た目と触診で肥満度を5〜9段階で評価する指標)を活用してください 4

猫の場合は、犬ほど食事の脂肪分に敏感ではないとされていますが、消化に良い療法食を処方することがあります。特に、猫の膵炎は「トライアダイティス」として炎症性腸疾患や胆管炎と併発することが多いため、慢性膵炎(まんせいすいえん:炎症が長期間続く状態)への移行に注意し、退院後も定期的な血液検査と超音波検査による経過観察が重要です 3

少しでも食欲が落ちたり、吐き気を見せたりした場合は、蒲田の動物病院へのアクセスも便利な当院へ早めにご相談ください。早期の再診が再発時の重症化を防ぎます。


まとめ・イース動物病院へのご相談

本記事の要点を以下にまとめます。

急性膵炎は、犬では嘔吐・食欲不振・腹痛(祈りのポーズ)を、猫では元気消失・食欲不振・脱水を主な症状とする、命に関わる危険性のある疾患です。症状が非特異的であるため、他の消化器疾患との鑑別が重要であり、Spec cPL/Spec fPLによる血液検査と腹部超音波検査を組み合わせた迅速な診断が求められます。治療の鍵は、積極的な点滴による膵臓の血流維持、適切な鎮痛管理、そして「早期の経腸栄養(食事)」です。重症化のサイン(黄疸、ぐったりしている、体温が低い等)を見逃さず、異常を感じたらすぐに動物病院を受診してください。退院後は低脂肪食の徹底と適正体重の維持が再発防止の要となります。


🏥 イース動物病院(大田区大森西)へのご相談はお気軽に

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項目内容
病院名イース動物病院
院長芹沢和也
住所〒143-0015 東京都大田区大森西4-17-20
TEL03-3768-7606
診療日年中無休(土・日・祝日も診療)
アクセス①京急本線「大森町駅」より徒歩10分(商店街を抜け東邦医大通りを左折、「東邦大学前」交差点)
アクセス②JR「蒲田駅」よりバス約4分
アクセス③JR「大森駅」よりバス約12分

参考文献

主要論文(引用数上位)

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