【大田区・大森の動物病院】犬と猫の糖尿病を獣医師が徹底解説
はじめに
大田区・大森・蒲田・品川・川崎エリアの飼い主の皆さま、こんにちは。イース動物病院・院長の芹沢和也です。
今回は、犬や猫で非常に多く見られる内分泌疾患(ホルモンの異常による病気)である「糖尿病」について詳しく解説します。
糖尿病は、発見が遅れると命に関わる合併症を引き起こす恐れがある一方で、早期に適切な治療を開始すれば、ご家族と一緒に穏やかな生活を長く続けることができる病気です。
特に猫では、早期の集中的な治療により「インスリン注射が不要になる状態(寛解)」を目指せる可能性もあります。
愛犬・愛猫の「多飲多尿(お水をたくさん飲み、おしっこが増える)」といったサインを見逃さず、正しい知識を持っていただくための参考になれば幸いです。
1. 臨床兆候
糖尿病の症状は、初期の段階から進行するにつれて大きく変化します。飼い主様がご自宅で気づけるサインを見逃さないことが早期発見の鍵となります。
1-1. 早期に現れる症状
最も特徴的で、多くの飼い主様が最初に気づくのは「多飲多尿(たいんたにょう:お水を大量に飲み、尿の量が増えること)」です。血糖値が高くなることで、尿中に糖が漏れ出し、浸透圧の働きで水分も一緒に尿として排出されてしまうために起こります 。また、エネルギーをうまく利用できないため、「多食(たしょく:食欲が異常に増すこと)」にもかかわらず「体重減少」が見られるのも典型的なサインです 。
1-2. 進行に伴い現れる症状
病気が進行すると、犬では「白内障(はくないしょう:目の水晶体が白く濁り、視力が低下する)」が急速に進行することが多く、診断後1年以内で約75%の犬が発症すると報告されています 。猫では「糖尿病性神経障害(末梢神経が障害され、かかとをベタッと床につけて歩く蹠行(しょこう)姿勢になる)」が見られるようになります 。また、被毛のパサつきや、元気がなくなる様子も目立ってきます。
1-3. 緊急性の高い症状(すぐに受診すべきサイン)
糖尿病が悪化し「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA:体がエネルギー不足に陥り、脂肪を分解した結果生じるケトン体が血液中に蓄積し、血液が酸性に傾く極めて危険な状態)」に陥ると、激しい嘔吐、完全な食欲廃絶、極度の脱水、昏睡状態といった症状が現れます。これは命に関わる緊急事態であり、一刻も早い治療が必要です 。
▼ 【図表①:臨床兆候の出現頻度】
| 臨床兆候 | 出現頻度(%) | 飼い主が気づくポイント |
| 多飲多尿 | 約90〜95% | 水の減りが異常に早い、トイレの回数・量が増える、トイレの失敗 |
| 体重減少 | 約80〜90% | よく食べているのに痩せてきた、背骨や肋骨が目立つ |
| 多食(食欲亢進) | 約50〜60% | 異常にがっつく、盗み食いをするようになる |
| 白内障(※犬のみ) | 約75%(診断後1年) | 目が白く濁っている、家具にぶつかるようになった |
| 蹠行(※猫のみ) | 約10〜15% | かかとを床につけて歩く、ジャンプできなくなった |
| 元気消失・食欲不振 | 約20〜30% | 進行期やケトアシドーシス併発時に見られる、ぐったりしている |
2. 鑑別疾患
「多飲多尿」や「体重減少」といった症状は、糖尿病以外の病気でもよく見られます。そのため、他の疾患を除外する(鑑別する)ことが非常に重要です。また、犬ではクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、猫では先端巨大症や甲状腺機能亢進症といった病気が、糖尿病の発症やインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)の原因となることがあり、これらの併発疾患の有無を確認することも治療の成否を左右します 。
▼ 【図表②:主要な鑑別疾患の比較】
| 疾患名 | 共通する症状 | 本疾患(糖尿病)との主な違い | 鑑別に有用な検査 |
| クッシング症候群(犬) | 多飲多尿、多食、腹部膨満 | 尿糖が陰性(糖尿病併発時を除く)、脱毛や皮膚の菲薄化が目立つ | ACTH刺激試験、腹部エコー(副腎腫大) |
| 慢性腎臓病(犬・猫) | 多飲多尿、体重減少、食欲不振 | 尿糖が陰性、多食ではなく食欲不振が多い、高血糖がない | 血中BUN・Cre・SDMA、尿比重低下 |
| 甲状腺機能亢進症(猫) | 多飲多尿、多食、体重減少 | 尿糖が陰性、活動性の亢進(落ち着きがない)、頻脈 | 血中総T4(サイロキシン)測定 |
| 先端巨大症(猫) | 多飲多尿、多食、体重減少 | 著しいインスリン抵抗性、下顎の突出や四肢の肥大 | 血中IGF-1(インスリン様成長因子1)測定 |
3. 検査と診断アプローチ
糖尿病の診断は、①特徴的な臨床症状(多飲多尿、体重減少など)、②持続的な高血糖、③尿糖の陽性、の3つが揃うことで確定します 。ただし、猫ではストレスによって一時的に血糖値が跳ね上がる「ストレス性高血糖」がよく見られるため、慎重な判断が求められます 。大田区の動物病院である当院では、以下のステップで丁寧に診断と合併症の評価を行います。
▼ 【図表③:診断フローチャート】
1.【問診・身体検査】多飲多尿・体重減少の確認、白内障(犬)や蹠行(猫)の有無の確認
2.【一次検査(血液検査・尿検査)】
•血糖値の上昇(犬: >200mg/dL, 猫: >250mg/dL)、尿糖(+)を確認
•ケトン体の有無(DKAの除外)を確認
3.【追加検査(猫のストレス性高血糖の除外)】フルクトサミン(過去2〜3週間の平均血糖値を反映する指標)の測定
4.【画像検査(X線・エコー)】併発疾患(膵炎、クッシング症候群、腫瘍など)のスクリーニング
5.確定診断およびインスリン治療の開始
3-1. 身体検査のポイント
体重・体型(BCS:ボディコンディションスコア)の評価、脱水の有無、眼の検査(犬の白内障)、神経学的検査(猫の歩様異常)、腹部の触診(肝腫大の有無)を念入りに行います。
3-2. 一次検査
■ 血液検査(CBC:全血球算定・生化学検査)
持続的な空腹時高血糖が最も重要な所見です。また、高脂血症(コレステロールや中性脂肪の上昇)が約70%の症例で見られます。肝酵素(ALT、ALP)の上昇も頻繁に認められます。猫では、過去1〜3週間の血糖値の平均を反映する「フルクトサミン」の測定が、ストレス性高血糖との鑑別に不可欠です 。
■ X線(レントゲン)検査所見
糖尿病単独ではX線検査で特異的な変化は見られませんが、合併症や併発疾患の評価に有用です。
•撮影体位:右側臥位(右を下にした横向き)、左側臥位、腹背位(仰向け)の3方向から腹部全体を撮影します。
•本疾患で特徴的なX線所見:約40〜50%の症例で「肝腫大(肝臓が腫れて大きくなること)」が認められます。X線画像では、肝臓の辺縁が丸みを帯びて鈍になり、胃の軸が後方へ変位し、肝臓のX線不透過性(濃度)がやや低下して見えるのが特徴です。
•注意点:膵炎を併発している場合、右前腹部(十二指腸の近く)の陰影が白っぽく不鮮明(スリガラス様)になることがありますが、X線だけでの診断は難しいためエコー検査を併用します。
■ 超音波(エコー)検査所見
糖尿病の背景にある膵炎や副腎疾患(クッシング症候群)を探るために非常に重要な検査です。
•評価部位:仰向け(背腹位)で、肝臓、胆嚢、膵臓、両側の副腎、腎臓を丁寧にプローブ(超音波を当てる端子)でスキャンします。
•本疾患で特徴的なエコー所見:
•肝臓:脂肪肝(肝リピドーシス)を伴うことが多く、約50〜60%の症例で肝臓全体が「高エコー(正常よりも白く明るく見える状態)」になります 。
•膵臓:膵炎を併発している場合(犬の約30%、猫の約40%)、膵臓が腫大し「低エコー(暗く黒っぽく見える状態)」となり、周囲の脂肪組織が「高エコー(白く見える)」になる所見が認められます。カラードプラ検査(血流を色で表示する検査)では、炎症部位の血流シグナルが増強することがあります。
•副腎:犬で両側の副腎が腫大(短径が6〜7mm以上)している場合、クッシング症候群の併発を強く疑います(糖尿病犬の約20%に併発)。
•注意点:肥満の動物では、皮下脂肪や腹腔内脂肪によって超音波が深部まで届きにくく、膵臓の描出が困難になることがあるため、慎重な評価が必要です。
▼ 【図表④:各検査の主要所見サマリー】
| 検査の種類 | 主要な所見 | 出現頻度(%) | 臨床的意義 |
| 血液生化学検査 | 高血糖(空腹時 >200-250mg/dL) | 100% | 糖尿病の確定診断に必須 |
| 高脂血症(コレステロール・中性脂肪高値) | 約70% | 脂質代謝の異常を示す | |
| 肝酵素(ALT・ALP)の上昇 | 約50-60% | 肝臓への脂肪蓄積や二次的な肝障害 | |
| 尿検査 | 尿糖陽性 | 100% | 血糖値が腎臓の閾値を超えていることを示す |
| ケトン体陽性 | 約10-20% | 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のサイン、緊急性が高い | |
| X線検査 | 肝腫大(胃軸の後方変位、辺縁の鈍化) | 約40-50% | 脂肪肝や肝炎の存在を示唆 |
| 超音波検査 | 肝臓の高エコー化 | 約50-60% | 脂肪肝(肝リピドーシス)の併発 |
| 膵臓の腫大・低エコー化、周囲脂肪の高エコー化 | 約30-40% | 膵炎の併発を示唆、インスリン抵抗性の原因 |
3-3. 二次検査・確定診断のための特殊検査
インスリン治療の反応が悪い(インスリン抵抗性がある)場合、猫では先端巨大症を疑い血中IGF-1測定を、犬ではクッシング症候群を疑いACTH刺激試験などの特殊検査を追加します 。
4. 治療の提案
糖尿病の治療のゴールは、「完全に正常な血糖値に戻すこと」ではなく、「多飲多尿や体重減少といった症状をなくし、低血糖やケトアシドーシスなどの危険な合併症を防ぎながら、良好なQOL(生活の質)を維持すること」です 。イース動物病院では、最新のエビデンスに基づき、動物ごとのライフスタイルに合わせた治療をご提案します。
4-1. 内科的治療(インスリン療法と食事療法)
治療の柱は、不足しているインスリンを外から補う「インスリン注射」と、血糖値の急激な上昇を抑える「食事療法」です。
•インスリン注射:犬では「NPHインスリン」や「豚インスリン亜鉛懸濁液」、猫では持続時間の長い「グラルギン」や「プロタミン亜鉛インスリン(PZI)」を、通常1日2回、皮下注射します 。特に猫では、早期からグラルギンなどの長時間作用型インスリンと低炭水化物食を組み合わせることで、高い確率(最大80%以上)で「糖尿病の寛解(インスリン注射が不要になる状態)」を目指せることが複数の研究で示されています 。
•食事療法:犬では食後の血糖値上昇を緩やかにする「高食物繊維食」、猫では本来の食性に近い「高タンパク・低炭水化物食」が推奨されます 。
4-2. 支持療法・合併症の治療
ケトアシドーシス(DKA)に陥っている場合は、直ちに入院し、静脈内点滴による徹底的な水分・電解質補給と、短時間作用型インスリンの持続点滴または頻回注射による集中治療が必要です 。
▼ 【図表⑤:推奨治療プロトコル】
| 治療の種類 | 薬剤・処置名 | 用量・用法の目安 | 投与期間の目安 | エビデンスレベル |
| インスリン療法(犬) | 豚インスリン亜鉛懸濁液 または NPHインスリン | 初期量 0.25〜0.5 U/kg、1日2回 皮下注射 | 生涯にわたり継続 | 高(標準的治療) |
| インスリン療法(猫) | グラルギン または プロタミン亜鉛インスリン(PZI) | 初期量 0.25〜0.5 U/kg、1日2回 皮下注射 | 寛解すれば中止可能、それ以外は継続 | 高(寛解率向上のエビデンス多数) |
| 食事療法(犬) | 療法食(高繊維・複合炭水化物食) | 1日の必要カロリーを2回に分け、注射と同時に給与 | 生涯にわたり継続 | 高 |
| 食事療法(猫) | 療法食(高タンパク・低炭水化物食) | 1日の必要カロリーを複数回に分けて給与 | 生涯にわたり継続 | 高 |
5. 予後
糖尿病と診断されると不安に思われるかもしれませんが、適切な治療と管理を行えば、多くの犬や猫が健康な動物と変わらない寿命を全うすることができます。
5-1. 治療反応性と生存期間
イギリスの大規模な疫学調査によると、犬の糖尿病の生存期間の中央値(MST:集団の半数が生存する期間)は診断から約2.6年(964日)であり、インスリン治療を開始した犬は、開始しなかった犬に比べて死亡リスクが大幅に低下することが示されています 。
猫においては、早期にグラルギン等の長時間作用型インスリンと低炭水化物食による集中的な治療を行った場合、最大で80%以上の猫が「寛解(インスリン離脱)」を達成できるという報告があります 。寛解に達した猫は、そうでない猫に比べて生存期間が有意に長いことが分かっています 。
5-2. 予後を左右する因子
糖尿病の予後には、以下の様々な因子が関与します。特に併発疾患の有無は、インスリン抵抗性を引き起こすため重要です。
▼ 【図表⑥:予後因子の比較】
| 分類 | 予後因子 | 根拠となる論文・データ |
| 良好な予後因子 | 早期のインスリン治療開始 | O'Neillら(2020)、死亡リスクを大幅に低減(ハザード比: 0.08) |
| (猫)診断から半年以内の良好な血糖コントロール | AAHAガイドライン(2018)、寛解率の向上に寄与 | |
| (猫)低炭水化物食(ウェットフード)の給与 | Bloomら(2014)、Ziniら(2023)、寛解率が3倍に上昇(オッズ比: 3.16) | |
| 不良な予後因子 | 診断時の著しい高血糖(犬で >720mg/dL [40mmol/L]) | O'Neillら(2020)、死亡リスク2.73倍(ハザード比: 2.73) |
| ステロイド(糖質コルチコイド)の過去の投与歴 | O'Neillら(2020)、死亡リスク1.86倍(ハザード比: 1.86) | |
| 併発疾患(クッシング症候群や重度の膵炎)の存在 | Pérez-Lópezら(2023)、CS併発犬は生存期間が短縮 |
5-3. 飼い主が自宅でできるケアとQOL(生活の質)の維持
ご自宅での毎日のインスリン注射と食事管理が治療の成功の鍵です。また、最近では動物用の「持続血糖測定器(CGM:皮下にセンサーを留置し、連続的に血糖値を測定する機器)」を皮膚に装着し、スマートフォンでご自宅の血糖値の推移をリアルタイムで確認できるシステムも普及しており、当院でも積極的に導入しています 。これにより、動物への採血のストレスを減らしつつ、より安全で精度の高い治療が可能となっています。
まとめ・イース動物病院へのご相談
1.多飲多尿・体重減少は糖尿病の重要な初期サインです。見逃さずに早期受診を。
2.診断には血液検査・尿検査だけでなく、エコー検査等で膵炎や内分泌疾患などの併発疾患を確認することが重要です。
3.犬では生涯のインスリン投与が必要ですが、猫では早期の適切な治療(グラルギン+低炭水化物食)により寛解(インスリン離脱)を目指せる可能性があります。
4.適切な治療とご自宅でのケアにより、良好なQOLを保ちながら長生きすることが十分に可能です。
🏥 イース動物病院(大田区大森西)へのご相談はお気軽に
大田区・大森・蒲田・品川・川崎エリアで、「お水を飲む量が異常に増えた」「食べているのに痩せてきた」など、愛犬・愛猫の体調でご不安なことがあれば、どうぞお気軽に大田区の動物病院、イース動物病院へご相談ください。
当院は土曜・日曜・祝日も年中無休で診療しており、お仕事のある平日でも週末でも受診いただけます。糖尿病の管理や、ご自宅でのインスリン注射のサポートなど、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけております。
| 項目 | 内容 |
| 病院名 | イース動物病院 |
| 院長 | 芹沢和也 |
| 住所 | 〒143-0015 東京都大田区大森西4-17-20 |
| TEL | 03-3768-7606 |
| 診療日 | 年中無休(土・日・祝日も診療) |
| アクセス① | 京急本線「大森町駅」より徒歩10分(商店街を抜け東邦医大通りを左折、「東邦大学前」交差点) |
| アクセス② | JR「蒲田駅」よりバス約4分 |
| アクセス③ | JR「大森駅」よりバス約12分 |
