犬と猫の大腿骨骨折について|早期発見・早期治療が大切

大腿骨骨折とは、股関節から膝までにある太ももの骨(大腿骨)が折れてしまうことを指します。大腿骨骨折は、事故などによって大腿骨に強い衝撃が加わることで起こりますが、犬や猫の骨折の中では比較的発生率が高く、基本的には手術による治療が必要になります。

今回は犬と猫の大腿骨骨折について、原因や症状、治療方法などを解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.ご家庭でできる術後のケアについて
6.まとめ

原因

大腿骨骨折を起こす原因は、交通事故や高い場所からの落下事故、動物同士のケンカ、飼い主の不注意による事故(踏んでしまった、ドアに挟んでしまったなど)などが挙げられます。

また、骨腫瘍によって、病的骨折してしまうケースもあります。

症状

犬や猫が大腿骨骨折を起こすと患部が腫れ、強い痛みを伴います。それにより、歩行困難や跛行(びっこを引く)、食欲や元気がなくなることもあります。

また、大腿骨骨折は適切な治療を行わずに放置することで、変な位置で骨がくっついてしまい、歩行に異常をきたす恐れがあります

診断方法

大腿骨骨折の診断は、まず問診で経緯や症状を確認し、触診を行います。
その後、X線検査やCT検査を行い、大腿骨が折れていることを確認することで確定診断します。

治療方法

大腿骨骨折の主な治療法は、プレート固定や創外固定といった外科的治療です。ただし、手術を行ったからといってすぐに骨が癒合するわけではありません。そのため、術後は安静に過ごし、経過をみながらリハビリテーションを行うことで機能回復をはかります
リハビリテーションが順調に進めば、術後2〜3か月くらいで骨がしっかりと癒合するため、それまでは定期的に通院し、経過を観察することが大切です。

また、骨折の治療法のひとつに、ギプス固定やケージレストなどといった保存的治療があります。
しかし、ギプスのみで股関節を動かないように固定することは難しいため、推奨されていません。どうしても手術が難しい場合はケージレスト(狭いケージの中で行動を制限する)による絶対安静と薬による治療を行います。

ご家庭でできる術後のケアについて

犬や猫が大腿骨骨折を起こしてしまった場合は、とにかく安静にすることが大切です。とはいうものの、犬や猫に動かないよう説得するのは困難です。そのため、トイレの時間以外は1〜2歩は歩ける程度で方向転換や上下運動ができないようなサイズのケージに入れる「ケージレスト」を行い、安静に過ごせるよう徹底しましょう。

また、食事と服薬については、獣医師の指示に従うことが大切です。万が一、術後に食欲がなく、ケージレストで体重が増えるような場合には、必ず動物病院に相談しましょう。

術後は傷口の観察や骨の癒合具合を確認するために、定期的な通院が必要です。稀に手術を行っても骨が正常に治癒しない「癒合不全」を起こすこともあるため、自己判断で通院をやめないように注意してください。

さらに、大腿骨骨折の再発予防を行うことも大切です。散歩中はノーリードにしない、脱走防止の柵を玄関に設置する、ソファなど高さのある家具を置かないようにするなどして、事故が起こらないように環境を整えましょう。

まとめ

大腿骨骨折は早期発見・早期治療を行うことで回復が見込めます。ただし、飼い主様のご協力なくしては良好な予後は望めないため、獣医師としっかり連携することが大切です。

また、愛犬や愛猫の異変に気づいたら、迅速に動物病院を受診することをおすすめします。当院では整形外科内科の専門外来も行っておりますので、ぜひご気軽にご相談ください。

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