腫瘍科

はじめに

がんの診療には「迅速な診断」と「外科治療」「抗がん剤療法」「放射線療法」などの複合的な治療が必要になります。
しかし、実際の治療法の選択となる際にはご家族の生活スタイル・通院や費用面・医療設備や獣医師のスキルなどの制限要素もあります。
よって、がんの治療は画一的なものではなく、同じ疾患であっても、その子やご家族によって最適となる治療方法は異なります。
イース動物病院では日本獣医がん学会II 種認定医が常勤しており、ご家族と動物達が一緒に少しでも⾧く元気な時間を過ごせるようにお手伝いさせて頂きます。

腫瘍科診療の流れ

悪性腫瘍が疑われる場合には以下の手順に従い診断します。

1、なんという種類の腫瘍か?

細胞診検査や組織検査などにより腫瘍の種類を知ることができます。
腫瘍科診療の進め方は、まずこのしこりに対しての検査として細胞診を行います。
細胞診とは、細い針を用いて、しこりの一部の細胞を採取します。
その細胞を顕微鏡で見て、腫瘍なのか、腫瘍ではないのか、腫瘍であった場合、何の種類の腫瘍なのかを予測します。腫瘍の種類によってはバイオプシー(組織生検)が必要な事もありおます。
予測をたて、飼い主様と相談しながら、その後の治療を考えていきます。

2、どこまで広がっているのか?

悪性腫瘍はその場で大きくなるだけでなく、リンパ節や肺・肝臓などにも転移します。
触診やレントゲン検査、超音波検査などにより腫瘍がどこまで進行しているのかを調べます。

3、全身状態の確認

同じ病名の腫瘍であっても、進行度評価によって治療方針が変わったり、その子の予後が異なったりします。
また、腫瘍の治療には手術や抗がん剤など、体に負担のかかるものがあります。
予後に見合った適切な治療の選択を提示するために、血液検査や一般身体検査などを通して確認する事が必要です。

治療方法

悪性腫瘍においては以下の各治療を組み合わせて治療を行います。

1、外科治療

最も効果が高い治療法です。しかし手術できる範囲には制限があり、欠点として手術浸襲(痛み、欠損等)、麻
酔が必要であることなどがあげられます。

2、化学療法

リンパ腫や白血病などの血液系の腫瘍、手術後の補助的治療として、化学療法が行われます。
抗がん剤というと、副作用がつらいイメージが強くつきまといますが、複数の補助療法を組み合わせる事で、なるべく
副作用が出づらくする工夫をさせて頂きます。

3、放射線治療

脳腫瘍や鼻腔内腫瘍などでは放射線治療が第一選択となります。
適応症例につきましては放射線治療装置を持つ専門機関へのご紹介を提案しております。

4、その他の治療

上記3 大治療が主軸となるがん治療ですが、補助療法の一環としてイース動物病院では光線温熱療法をおこなっております。
光線温熱療法とは、腫瘍内にインドシアニングリーン(ICG)を局注し、外部より近赤外線光を照射することにより、光線力学療法と温熱療法の両者の相乗効果を期待したがん局所療法です。
肝機能検査薬であるインドシアニングリーン(ICG)は、約800nm の波⾧の光を吸収して発熱作用と活性酸素を発生させることが明らかとなっています。
光線力学的作用として、活性酸素によるがん細胞のアポトーシス、虚血性壊死、免疫細胞の活性化作用などが期待されます。また温熱作用は、45℃まで耐えうる正常細胞と比べ、43℃前後で死滅するがん細胞の特性を利用したもので、がん細胞のアポトーシスを誘導します。
残念ながらその効果や安全性はまだ確かなものではなく、既存の治療法を差し置いてお勧めできる状態ではありません。しかし様々な要因で外科的切除の適応とならない体表腫瘍において、治療方法の選択肢としてご提案しております。