愛犬・愛猫の後ろ足の異変に要注意!|原因と受診のタイミングを解説
愛犬や愛猫が急に後ろ足を痛がったり、かばいながら歩いたりするようになったら、どうしたのだろうと不安になりますよね。重度になると強い痛みから元気や食欲が低下したり、力が入らず立ち上がれなくなってしまったりすることもあるため、早期発見・早期治療を行うことが重要です。
今回は、犬や猫の後ろ足に異変が起きたときに考えられる原因や緊急性を判断するポイント、予防方法などについて解説します。
■目次
1.後ろ足の異変を見分けるポイント
2.後ろ足の異変が起こりやすい犬種・猫種
3.考えられる主な原因と症状
4.年齢別に見られる特徴的な症状
5.緊急性の判断ポイント
6.日常生活でできる予防と対策
7.まとめ:早期発見・早期治療の重要性
後ろ足の異変を見分けるポイント
健康な犬や猫はつま先立ちで歩き、①左の後ろ足、②左の前足、③右の後ろ足、④右の前足の順に足を運びますが、体重のある中・大型犬やオールドイングリッシュシープドッグでは、①と②、あるいは③と④が同時に出ることもあります(側対歩)。いずれにしても必ず2本以上の足が地面に着いているため、身体や頭はほとんど上下しません。一方で、止まっているときは4本の足に均等に体重がかかります。そのため、正面から見ても横から見ても、地面に対して手足がきれいな長方形を作ります。
しかし、後ろ足に異常がある場合は、歩き方や立ち方に以下のような異変が現れるようになります。
<足を引きずる>
筋肉や骨、関節、神経などに異常が見られると、足を引きずることがあります。
<跳ねるように歩く>
痛みなどによって患肢に体重がかけられない場合、足をかばったり浮かせたりするため、頭を上下に振りながら跳ねるように歩きます。
<ふらつく>
足の痛みや神経の異常、前庭疾患、貧血などが原因でふらつくことがあります。
また、高齢の犬や猫では筋力が低下するため、ふらふらと歩くようになります。また、首が下がって背中は丸まり、若い頃と比べて歩幅が小さくなります。
後ろ足の異変が起こりやすい犬種・猫種
一部の犬種や猫種では、後ろ足の異変が起こりやすいといわれています。<大型犬の場合>
シェパードやラブラドールなどの大型犬は股関節の病気にかかりやすく、後ろ足に痛みが生じ、歩き方に異変が起こります。
<小型犬の場合>
チワワやトイ・プードルは膝蓋骨脱臼を、ミニチュア・ダックスフンドは椎間板ヘルニアを起こしやすく、歩き方に異変が起こります。
<猫の場合>
スコティッシュフォールドは骨軟骨異形成症を起こしやすく、足を引きずって歩いたり、足を挙げて歩いたりします。また、猫の肥大型心筋症は血栓ができやすく、後ろ足の血管に詰まると突然後ろ足を痛がったり、麻痺が現れたりして、重度の場合は命にかかわります。
考えられる主な原因と症状
後ろ足に異変が見られた場合、以下のような原因が考えられます。【関節疾患】
<股関節形成不全>
大型犬に多く見られる病気です。遺伝的な要因や急速な成長、過度な運動によって関節に大きなストレスがかかることで発症すると考えられています。股関節の緩みによって後ろ足が不安定になり、後ろ足を引きずる、後ろ足の足先の間隔が狭くなって地面に対して後ろ足が台形を作る、うさぎ跳びのような歩き方をするといった症状が現れます。
<膝蓋骨脱臼>
小型犬に多く見られる病気で、猫にはほとんど見られません。ケガが原因で起こることもありますが、その多くは後ろ足の筋肉や骨の先天的な発育異常が原因で起こります。足の痛みや骨の変形から、後ろ足を挙げる、引きずる、スキップするように歩くなどの症状が見られます。
犬の膝蓋骨脱臼についてはこちらから
猫の膝蓋骨内方脱臼についてはこちらから
【脊椎の問題】
<椎間板ヘルニア>
胴長短足の犬種に多く見られる病気で、猫では稀です。背骨と背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで足先を引きずるように歩く、後ろ足に力が入らずふらつくなどの症状が見られます。
【その他の原因】
<外傷>
交通事故や落下事故、けんかなどによってケガをしたり、足の裏に伸びた爪やトゲなどが刺さったりすることで、後ろ足に異変が起こることもあります。
<神経疾患>
首の脊椎に変形が起こる「ウォブラー症候群」では、後ろ足のふらつきや麻痺を引き起こします。また、身体の平衡感覚に異常をきたす「前庭疾患」でも、後ろ足がふらつくことがあります。
年齢別に見られる特徴的な症状
年齢によって見られる特徴的な症状は、主に以下が挙げられます。<若齢期>
成長期には筋肉の形成や骨の成長などがアンバランスになりやすく、先天性の膝蓋骨脱臼や股関節形成不全などを起こしやすい時期といえます。また、エネルギーに満ち溢れているため、けんかや事故などによってケガをしやすい時期でもあるため、注意が必要です。
<成犬・成猫期>
椎間板ヘルニアやウォブラー症候群、外傷などによる後ろ足の異常がよく見られます。また、若齢期に発症した病気が進行して、後ろ足に歩行異常などの症状が見られることもあります。
<高齢期>
高齢期は後ろ足の筋力の低下によって、ふらついたり歩けなくなったりするケースが多く見られます。また、犬では前庭疾患を発症しやすい傾向にあります。
緊急性の判断ポイント
以下のようなケースでは緊急性が高いため、直ちに動物病院を受診しましょう。・元気や食欲が落ちるほど痛みが強い
・骨折が疑われる場合
・後ろ足に全く力が入らない
・猫が突然後ろ足を痛がって足先が冷たくなっている
また、症状が一過性であれば経過観察をしても問題ないケースがほとんどですが、再発を繰り返す場合は念のため動物病院を受診するようにしましょう。
日常生活でできる予防と対策
後ろ足になるべく負担がかからないよう、適切な食事管理と適度な運動で肥満を予防しましょう。犬であれば日々の散歩を怠らず、階段や坂道などを通るようにするとより効果的です。猫であればキャットタワーやキャットウォークを設置し、おもちゃなどを使ってしっかりと上下運動させましょう。また、床材がツルツルすべる場合や足裏の毛が肉球を覆っている場合などは、転倒事故を起こしたり、膝の関節に大きな負担がかかったりします。そのため、床にはカーペットなどを敷き、1ヶ月に1回を目安にパットの毛刈りをするようにしましょう。
まとめ:早期発見・早期治療の重要性
犬や猫の後ろ足に異変が生じた場合は病気やケガなど、さまざまな原因が考えられます。中には直ちに治療を行わないと完治が難しくなるケースや、命にかかわるケースもあるため、後ろ足に余計な負荷がかからないよう日頃からしっかりと体重管理を行い、飼育環境を整備しましょう。ただし、完全に予防することは難しいため、日頃から愛犬・愛猫の歩き方や立ち姿を動画や写真におさめて記録し、いち早く異常に気がつけるようにしましょう。
本記事の内容を参考に、後ろ足に気になる症状が見られた場合は、ぜひ一度当院までご相談ください。
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