~犬と猫と腸活と~③

こんにちは。イース動物病院です。 シリーズでお伝えしているワンちゃんネコちゃんへの腸活の効果。

今回はプレバイオティクスについてお話しします。

キーワードは“食物繊維”

皆さんも食物繊維という言葉は聞いたことがあるかと思います。

何となく”食物繊維は体に良い!” “炭水化物の取りすぎは体に悪い!” みたいな印象がありますが、実は食物繊維は炭水化物に含まれます。

炭水化物とは、「糖質」と「食物繊維」の総称です。

炭水化物のうち、体内で消化・吸収され、エネルギー源となるものを「糖質」体内で消化・吸収されずほとんどエネルギー源にはならないものを「食物繊維」といいます。

食物繊維も吸収されて、体そのものの栄養となりそうなイメージですが、実はそうではありません。

腸内細菌を介して便や腸内環境を整える働きがあります。

食物繊維には可溶性(水溶性)食物繊維不溶性食物繊維に分かれます。

食物繊維の便への直接的な働きとして

  • 可溶性:小腸を通過する際に吸着した水分を硬い便に供給することで、便秘の改善が期待される
  • 不溶性 : 腸内容物のカサを増すことで腸の蠕動運動を促し、正常な腸内通過時間を保つ。また緩い便の水分を吸着する事で糞便の硬さと容積を増加させる(一般的には便通を改善するが、特にネコの場合は便秘を助長する可能性もあるため、与える量の調節は必要です)

が挙げられます。

そういった食物線維の中でも、腸内細菌の餌となり、腸内フローラに有益となるものを『プレバイオティクスと言います。

可溶性繊維の多くがプレバイオティクス

プレバイオティクスの定義として

1:消化管上部で加水分解、吸収されない。

2:大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌など)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する。

3:大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる。

4:宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する

といった内容が挙げられます。

サイリウムを除く可溶性繊維の多くは、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」の栄養源となり発酵するため、「発酵性繊維」と呼ばれます。

この発酵性繊維がプレバイオティクスに相当します。

オリゴ糖と呼べばわかりやすいですよね? オリゴ糖にはガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖、マンナオリゴ糖などがあります。

これら発酵性繊維は、多くの「悪玉菌」には利用されないため、善玉菌に優位な環境を作ることが期待されます(ただし、これは分かりやすくしたフレーズであり、厳密には正確ではありません。)

最近ではフラクトオリゴ糖の1種である“ケストース”が腸内細菌コントロールに役立つ「高機能プレバイオティクス」の代表格として注目されています(ただし、オリゴ糖の種類によって影響を受ける腸内細菌の種類は微妙に異なります。よって1種類のオリゴ糖と、複数種のオリゴ糖の併用では、後者の方が腸内多様性の向上に貢献する他、特定の細菌グループの突出を回避できるなど、大きなメリットがあります。)

プレバイオティクスで短鎖脂肪酸を増やす

これら発酵性繊維に細かな差異はあるものの、一概にビフィズス菌や乳酸菌や酪酸菌といった有益菌を増進し、糞便中の『短鎖脂肪酸』を増加させる事が知られています。

この短鎖脂肪酸は「腸上皮の栄養」「腸上皮細胞間接着の亢進」「ムチン産生亢進による粘膜バリアの強化」「腸内pH低下による病原性菌の増殖抑制」といった、腸にとって有益な作用がある事がわかっています。

さらに近年では『制御性T細胞の分化誘導などを介した抗炎症作用』が報告されるようになっています。

この制御性T細胞が減少する事と炎症性腸疾患やアレルギー性疾患といった病気の発症が関連すると考えられています。

また、短鎖脂肪酸の1種である「酪酸」は大腸の粘膜上皮細胞の代謝を促進し、血管から送られてくる酸素を消費させ、大腸内の酸素濃度を低下させる効果があります。

大腸内の酸素濃度を低下させる事は、有益菌が腸内で生きやすい環境を提供してくれます。これについてはまた次回、お話ししたいと思います。

まとめ

プレバイオティクスの正体はオリゴ糖などの可溶性食物繊維。

有益菌の餌となり短鎖脂肪酸を作り出す。

短鎖脂肪酸は腸粘膜にとって有益な作用となり、過剰免疫を抑制する働きがある。