犬猫の健康診断が大切な理由と血液検査で分かるT4(甲状腺ホルモン)について

健康診断が愛犬・愛猫の長生きの秘訣

こんにちは!東京都大田区大森西のイース動物病院です。ペットの健康診断は、病気を未然に防ぐための最善の方法です。人間と同様に犬や猫も歳を重ねるにつれて健康リスクが高まり、早期発見・早期治療が非常に重要です。健康診断は、日頃の健康状態を正確に把握し、潜在的な病気を発見するための大切な手段です。

ペットの病気は初期症状が見えにくいことが多く、特に内臓疾患やホルモン異常などの疾患は、飼い主が気づいたときにはすでに進行している場合が少なくありません。定期的な健康診断を行うことで、早期発見が可能となり、治療の成功率を高めることができます。

健康診断で行う主な検査

健康診断にはいくつかの種類がありますが、以下のような検査が一般的です:

  • 身体検査:体重、体温、皮膚の状態、歯や口腔の健康状態などを確認。
  • 血液検査:貧血、感染症、内臓の異常、ホルモンのバランスをチェック。
  • 尿検査:腎臓や膀胱の健康状態を確認。
  • 画像診断(レントゲン・超音波):内臓の形状や腫瘍の有無を調べる。

これらの検査の中でも、特に血液検査は多くの情報を得られる重要な手段です。その中で「T4(甲状腺ホルモン)」の測定は、犬猫の甲状腺機能を評価するために欠かせない項目です。


血液検査で分かるT4(甲状腺ホルモン)とは?

T4(サイロキシン)は、甲状腺から分泌されるホルモンで、身体の代謝やエネルギーの調整に重要な役割を果たしています。このホルモンの異常は、犬と猫に特有の甲状腺疾患につながる可能性があります。

T4の役割

T4は体内で以下のような働きをしています:

  • 代謝の調節:体温維持、エネルギー消費、筋肉や臓器の機能に影響を与える。
  • 成長と発達の促進:子犬や子猫では正常な成長に不可欠。
  • 心臓の機能維持:心拍数や血圧を調節する。
  • 消化機能のサポート:腸の働きを活発にする。

T4値が異常を示す場合、甲状腺疾患が疑われます。犬と猫では、それぞれ異なる甲状腺の病気が一般的です。


犬の甲状腺疾患:甲状腺機能低下症

病気の特徴

犬で最も一般的な甲状腺の病気は「甲状腺機能低下症」です。この病気は、甲状腺が十分な量のホルモンを生成できなくなることで発生します。中年齢以上の犬で多く見られ、大型犬や特定の犬種(ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ダックスフンドなど)で発症率が高いです。

症状

甲状腺機能低下症の主な症状には以下が含まれます:

  • 活動量の低下
  • 体重増加や肥満
  • 被毛の薄毛や脱毛、皮膚の乾燥
  • 冷え性
  • 無気力、精神的な鈍さ
  • 感染症への抵抗力低下

診断と治療

血液検査でT4の値を測定し、甲状腺機能低下症の可能性を評価します。低い値が出た場合には、追加検査(FT4やTSH)を行い、正確な診断を下します。治療は、ホルモン補充療法が中心で、定期的なモニタリングが必要です。


猫の甲状腺疾患:甲状腺機能亢進症

病気の特徴

一方、猫では「甲状腺機能亢進症」が一般的です。これは、甲状腺が過剰にホルモンを分泌する状態で、高齢の猫に多く見られます。甲状腺腺腫(良性の腫瘍)が原因であることがほとんどです。

症状

甲状腺機能亢進症の猫は、次のような症状を示すことが多いです:

  • 食欲の増加にもかかわらず体重が減少
  • 多飲多尿
  • 嘔吐や下痢
  • 神経質な行動、落ち着きのなさ
  • 心拍数の増加
  • 被毛のボサボサ感や脱毛

診断と治療

T4値が高い場合、甲状腺機能亢進症が疑われます。場合によっては追加検査(FT4測定や甲状腺スキャン)が必要です。治療方法には以下の選択肢があります:

  • 投薬治療:抗甲状腺薬の投与でホルモン分泌を抑える。
  • 食事療法:ヨウ素制限食を与える。
  • 放射線療法:放射性ヨウ素を用いて腺腫を縮小。
  • 外科手術:腺腫の摘出。

健康診断の重要性

犬猫の甲状腺疾患は、初期段階では気づきにくいため、定期的な健康診断が不可欠です。特に以下の場合には、積極的に血液検査を受けることをおすすめします:

  • 高齢のペット(7歳以上)
  • 食欲や体重の変化が見られる
  • 元気がない、または異常に活発になっている
  • 毛並みや皮膚の状態が悪化している

また、甲状腺疾患は放置すると心臓や腎臓に影響を与え、ペットの生活の質を大きく損なう可能性があります。早期発見であれば、適切な治療により症状を管理し、ペットが快適に暮らせる状態を保つことができます。


まとめ

犬猫の健康診断は、ペットの健康を守るための第一歩です。血液検査で測定されるT4値は、甲状腺疾患の早期発見に欠かせない指標です。特に高齢のペットでは、定期的な検査を受けることで、病気の進行を防ぎ、治療の効果を高めることができます。

大切な家族であるペットが長く元気でいるために、定期的な健康診断をぜひ習慣にしてください。愛犬・愛猫が幸せな生活を送るためのパートナーとして、獣医師と連携して健康管理に努めていきましょう。