咳や呼吸が速いは要注意?小型犬に多い心臓病、僧帽弁閉鎖不全症とは?
こんにちは大田区大森西のイース動物病院です。
突然ですが皆さん動物にも心臓病があるのはご存じですか?
今日は、心臓病と診断された一頭のワンちゃんとその病気についてお話させていただきます。
飼い主様から電話があり、『昨夜からよく咳をしている。ただ普段もたまにしていたし大丈夫かな?』と思っていたそうです。ただ朝になったら呼吸がはやいので受診したい。
という電話があり受診されました。
色々検査を実施していくと「僧帽弁閉鎖不全症」という、心臓の弁に異常が起こる病気が見つかりました。

こちらがレントゲンを撮った1枚です。心臓が大きく、球状に見えますね。

こちらは正常の子の心臓です。上の写真に比べると心臓の大きさが違うのが割ります。
当院で行っている循環器専門の先生にも見ていただき診断後、内服薬による治療をすぐにスタート。定期的に心臓の状態をチェックしていくことになりました。
それでは今回起きた僧帽弁併殺不全症とはどんな病気なのか?お話させていただきます。
■ 僧帽弁閉鎖不全症とは?
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」がしっかり閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。
この逆流によって、心臓が正常なポンプ機能を果たせなくなり、心臓への負荷が増大します。
進行すると、心臓が肥大し、最終的にはうっ血性心不全(心臓が血液を送り出せなくなる状態)に陥ります。
■ 心臓の構造と僧帽弁の役割
心臓には4つの部屋があり、それぞれに「弁」がついています。
僧帽弁は、左心房→左心室への血液の流れを一方向に保つための逆流防止弁です。
健康な状態では、心臓が収縮するとこの弁がぴったり閉じて、
血液は大動脈を通って全身に送られます。
しかし僧帽弁が劣化・変形すると、収縮時に弁が閉じきらず、
血液が左心房に逆流します(逆流性病変)。
■ 原因は?
主な原因は以下のとおりです:
- 弁の退行性変性 加齢により弁の組織が厚く・変形し、正常に閉じなくなる
- 腱索断裂
弁を支える細い繊維(腱索)が切れることで弁がめくれ上がる - 先天性異常や感染症(稀)
■ 好発犬種と年齢
この病気は、中〜高齢の小型犬に多く見られます。
特にリスクが高い犬種:
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(若齢で発症することも)
- チワワ
- トイプードル
- マルチーズ
- シーズー
- ミニチュアダックスフント など
発症は7歳以降が多く、高齢になるほどリスクが高まります。
■ 症状と進行の段階
初期は無症状のことが多いですが、進行すると以下のような症状が現れます:
ステージ | 状態 | 主な症状 |
B1期 | 心雑音あり、心拡大なし | 無症状 |
B2期 | 心雑音+心拡大あり | 咳、運動不耐性 |
C期 | 心不全症状あり | 呼吸困難、チアノーゼ、食欲不振 |
D期 | 治療抵抗性心不全 | 重度の肺水腫、失神、生命の危機 |
■ 小さな変化は、大切なサインかもしれません
心臓病は、初期にはわかりにくい病気です。
「ちょっと疲れやすい」「よく咳をする」「元気がない」など、
年齢や気候のせいと見過ごされがちなサインが、実は心臓からのSOSのこともあります。
定期的な健康チェックや、少しの変化にも目を向けてあげることが、
ペットの健康寿命を延ばす第一歩になります。当院では循環器の門の先生を月に1回お呼びしております。気になる事がございましたら大田区大森西のイース動物病院までご相談ください。