トイレの失敗じゃない?犬のマーキング行動を見分けるポイント

こんにちは!大田区大森のイース動物病院です。

「ちゃんとトイレを覚えたはずなのに、壁や家具におしっこをかける」「散歩から帰ったあと、玄関で少しだけおしっこをする」――そんな行動に困っていませんか?
実はそれ、トイレの失敗ではなく“マーキング”かもしれません。
マーキングは犬の自然な本能行動のひとつであり、叱ってもすぐにはやめさせることができません。
今回は犬のマーキング行動を見分けるポイントや、原因別の対処法、再発を防ぐためのコツを詳しく解説します。

犬のマーキングとは?

マーキングとは、犬が少量の尿を使って自分の存在をアピールする行動のこと。
人間の「名札」や「表札」のようなもので、犬にとってはコミュニケーション手段のひとつです。
オス犬によく見られますが、発情期のメス犬や、不安を感じやすい性格の犬にも起こることがあります。

排泄とマーキングの違い

犬のおしっこ行動には2つの目的があります。

  • 排泄:生理的な尿の排出(膀胱がいっぱいになった時)
  • マーキング:心理的な表現・縄張りアピール(匂いづけ)

マーキングの場合は、体内の尿をすべて出すわけではなく、ほんの少しを「チョン」とかけるのが特徴です。
また、平らな床よりも壁や家具の脚などの垂直面を好んで行います。

犬がマーキングをする主な原因

1. 縄張り意識の表れ

犬は本能的に自分の縄張りを匂いで示します。
新しい家具や来客、引っ越しなどで環境が変わると、「ここは自分の場所だ」と主張するためにマーキングを行うことがあります。
特に外で他の犬と会った後や、他の動物の匂いを感じた後に起こりやすいです。

2. ストレスや不安

環境の変化や飼い主の留守時間の増加、新しいペットの登場などで犬が不安を感じると、マーキング行動が増える傾向があります。
これは「自分の匂いをつけて安心したい」という心理的行動で、特に繊細な犬や神経質なタイプに多く見られます。

3. 去勢・避妊をしていない

ホルモンの影響もマーキングに大きく関係します。
特にオス犬は、性成熟とともに縄張り意識が強くなり、あちこちにおしっこをかけるようになります。
去勢手術をすることでホルモンバランスが落ち着き、マーキング行動が軽減するケースが多くあります。

4. 他の犬への対抗意識

散歩中に他の犬の匂いを嗅ぐと、「自分の匂いも残しておこう」と反応してしまいます。
多頭飼いの場合も同様で、「どちらが上なのか」を示すためにマーキングが頻発することもあります。

5. 飼い主の注意を引きたい

構ってもらえない、遊んでもらえないと感じたときに、マーキングを通じて注意を引こうとする犬もいます。
これは「叱られてもいいから見てほしい」という心理によるもので、行動学的には“学習されたマーキング”と呼ばれます。

マーキングとトイレの失敗を見分けるポイント

見た目は同じ「おしっこ」でも、マーキングと単なるトイレの失敗は原因も対処法もまったく異なります。
以下のチェックリストを参考に見分けてみましょう。

項目トイレの失敗マーキング
尿の量多い(排尿目的)少量を何度も
場所トイレの周辺・床など壁・家具の脚・玄関・カーテンなど垂直面
タイミング寝起き・食後・遊んだ後来客後・散歩後・新しい匂いを感じた時
姿勢しゃがんで排尿片足を上げて少量ずつ(オス犬に多い)
頻度日によってムラがある決まった場所・タイミングで繰り返す

もし「量が少なく、場所が特定の家具や壁に集中している」場合は、マーキングの可能性が高いです。

マーキングを減らすための具体的な対策

① 去勢・避妊手術を検討する

ホルモンの影響を抑えることでマーキングが軽減するケースは多いです。
特にオス犬の場合、生後6〜12ヶ月頃に手術を行うと、行動の定着を防ぐ効果が期待できます。
ただし、すでに習慣化している場合は、トレーニングと併用する必要があります。

また手術後すぐにピタッとマーキングがなくなるわけではありません。

② 環境を整えて安心感を与える

犬が安心できる環境では、マーキング行動は自然と減ります。
静かで落ち着けるスペースを確保し、寝床やトイレの場所を頻繁に変えないようにしましょう。
家具の配置を急に変えたり、新しい物を増やしたりするのも一時的なストレスになることがあります。

③ 匂いを徹底的に消す

マーキングをした場所に匂いが残ると、「ここは自分の場所」と認識して再び同じところにするようになります。
市販の酵素系消臭スプレーを使い、しっかりと匂いを除去しましょう。
アルコールや香料入りのものは犬の嗅覚に刺激が強すぎる場合があるので避けたほうが無難です。

④ 他の犬の匂いを持ち込まない

散歩のあとやドッグランから帰ったあとに、他の犬の匂いが体や足に残っていると、室内でマーキングが始まることがあります。
帰宅後は足やお腹を軽く拭き、外の匂いを室内に持ち込まないようにしましょう。

⑤ 行動を叱らず、静かに対応する

マーキングを見つけても、大声で叱るのは逆効果です。
犬は「排泄=嫌なこと」と学習してしまい、飼い主の見えない場所で隠れてマーキングをするようになります。
淡々と片付け、トイレで排泄できたときにしっかり褒めてご褒美をあげる。この繰り返しが一番の近道です。

⑥ 多頭飼いの場合の対策

多頭飼いでは、マーキングが「競争」や「優位性の主張」として現れることがあります。
それぞれの犬に個別の休憩スペースを設け、食事や寝床を分けることで安心感を与えましょう。
また、同時にトイレに行かせず、順番を決めるのも有効です。

マーキングがなかなか治らないときは?

去勢や環境改善をしてもすぐに治らない場合、行動が習慣化している可能性があります。
その場合は、行動カウンセラーや動物病院での相談がおすすめです。
特にストレス性のマーキングでは、行動療法や環境調整のアドバイスが効果的なケースもあります。

まとめ

マーキングは、犬が感じている不安や主張を「匂い」で表す自然な行動です。
つまり、叱るべき“問題行動”ではなく、飼い主に「今の環境が少し不安なんだ」と伝えるサインなのです。
焦らず、原因をひとつずつ取り除いていくことで、犬は安心し、マーキングも次第に減っていきます。
犬の行動を理解しながら、信頼関係を深めていくことが最も大切です。

大田区、蒲田、大森でお困りなことがありましたら、お気軽にご相談ください。


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