たくさん食べるのに痩せる病気(甲状腺機能亢進症)

『よく食べているのに、痩せてきた』

それはただ年をとったから?だけではないかも知れません。

食べているのにどんどん痩せてしまう病気の1つに甲状腺機能亢進症というものがあります。

今回は中高齢の猫ちゃんに多い甲状腺機能亢進症についてお伝えします。

概要

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰にホルモンを生産する疾患です。主に中高齢の猫に多く見られ、甲状腺ホルモンにより代謝が異常に高まるため、多様な症状を引き起こします。

原因

甲状腺機能亢進症の主な原因は、甲状腺の甲状腺腺腫です。これは甲状腺の細胞が異常増殖し、過剰な甲状腺ホルモンを生成することに起因します。悪性の甲状腺癌は稀です。また、環境要因や食事中のヨウ素量も関与していると考えられています

(日本と海外の疫学は異なります)

症状

甲状腺機能亢進症の症状は多岐にわたり、以下のようなものがあります

1. 体重減少:食欲が増加しても体重が減少する。

2. 多飲多尿:水をたくさん飲み、尿の量が増える。

3. 過活動:異常なほど活発になる。

4. 嘔吐と下痢:消化器症状が見られることがある。

5. 被毛の変化:被毛が荒くなり、脱毛が見られることがある。

6.心拍数の増加:心拍数が速くなることが多い。

(全てがこの症状を示すわけではありません)

診断

甲状腺機能亢進症の診断には、臨床症状の観察とともに血液検査が用いられます。具体的には、血中の総サイロキシン(T4)濃度を測定します。高値を示す場合、甲状腺機能亢進症の疑いが強まります。場合によっては、甲状腺の超音波検査、放射性アイソトープ検査も行われることがあります

治療

治療方法は主に以下の三つです

1. 投薬療法:抗甲状腺薬を用いて甲状腺ホルモンの生成を抑制します。これは一般的かつ即効性がありますが、継続的な投薬が必要です。

2. 外科的治療:腫大した甲状腺を外科的に除去する方法です。成功率は高いものの、手術リスクや再発の可能性があります。

3. 放射性ヨウ素治療:放射性ヨウ素(I-131)を用いて異常な甲状腺組織を破壊します。この方法は高い成功率を誇り、再発のリスクも低いですが、専門施設での治療が必要です。

一部の猫には、ヨウ素を制限した特別食が有効です。この食事は甲状腺ホルモンの生成を抑える効果がありますが、長期的な効果や他の栄養素バランスの問題が懸念されるため、獣医の指導のもとで行う必要があります。

合併症

甲状腺機能亢進症を治療せずに放置すると、以下のような合併症が生じる可能性があります:

1. 心疾患:高血圧や心筋症(心臓筋の肥大)が進行する。

2. 腎不全:高代謝により腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する。

3. 高血圧:血圧の上昇が見られ、その他の臓器にも悪影響を及ぼす。

予後

適切な治療を行えば、多くの猫は症状が改善し、良好な生活の質を保つことができます。ただし、慢性腎不全などの合併症がある場合は、予後が慎重になることがあります。定期的な血液検査と獣医師のフォローアップが重要です。

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は、特に中高齢の猫において一般的な疾患です。早期発見と適切な治療が重要であり、猫の生活の質を大幅に改善することが可能です。飼い主は猫の行動や健康状態に注意を払い、異常を感じた場合は早めに獣医師に相談することが推奨されます。

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