【要注意】猫の前十字靭帯断裂とは?放置すると取り返しのつかないことに!~整形疾患は身近に⁈~

こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。

皆さんは大切な愛猫が高い所からジャンプをして着地失敗してから後ろ足をびっこ引いていたらどうしますか?
当院ではこんなことがありました。
「キャットタワーから降りようとして着地したら失敗したみたいでそのあとから後ろ足が変だった。他の動物病院に受診したが、原因不明で関節炎か捻挫と言われた。痛み止めを使用したがよくならない。」
とのことで当院の整形専門外来に受診されました。

当院では横浜にある二次診療の整形外科・整形内科の医長が検査から診察まで行い前十字靭帯断裂の為飼い主様に、現在起きている状況、今後のリスク、治療方針をお話させていただきました。

今回飼い主様は手術をご希望され、手術でのリスクなどご説明し手術を行いました。

術後経過は良好で飼い主様もご満足しています。現在は飼い主様のご希望もあり、

現在は定期検診を行っていますがとても元気にキャットタワーにも飛び乗ったり降りたりしているとご満足いただけました。
猫は柔らかくしなやかな体を持ち、高い所からのジャンプや俊敏な動きが得意な動物です。そんな猫にも、意外と起こる整形外科疾患のひとつが**「前十字靭帯断裂」**です。
前十字靭帯は膝関節の中にある重要な靭帯で、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぎ、膝の安定を保つ役割を担っています。この靭帯が切れると、膝がグラグラになり、歩行やジャンプに大きな支障が出ます。

犬では比較的よく見られる病気ですが、猫でも起こります。そして猫の場合、「自然に治るだろう」と放置されがちですが、放置すると関節炎が進行し、生涯痛みや歩行障害が残る可能性が高いのです。


1. 猫の前十字靭帯断裂の原因

猫の前十字靭帯断裂は、犬のように加齢や肥満で徐々に靭帯が弱るケースもありますが、多くは急な外傷が原因です。

  • 高い所から飛び降りたときに着地に失敗
  • 走っていて方向転換を急にしたとき
  • 交通事故や落下事故
  • 他の猫や犬とのケンカによる膝への衝撃

特に完全室内飼いでも事故は起こります。例えば、キャットタワーから飛び降りた瞬間の着地の角度が悪かっただけで、靭帯に大きな負担がかかり断裂することがあります。


2. 症状の特徴

猫は痛みや不調を隠すのがとても上手な動物です。そのため、飼い主さんが気づいた時には症状が進行していることも少なくありません。前十字靭帯断裂の代表的な症状は以下の通りです。

  • 急に片足を上げて歩く
  • 後ろ足をかばうようにして歩く(スキップのような歩き方)
  • ジャンプや段差の昇降を避ける
  • 膝を触られるのを嫌がる
  • 動かない時間が増える

完全断裂の場合はほとんど足を着かなくなることもあります。一方で部分断裂では、日によって症状が出たり出なかったりするため、「様子を見よう」と判断してしまうことも多いです。しかし、この「様子見」が命取りになります。


3. 放置するとどうなる?

前十字靭帯が切れた膝は、関節が安定しないために常に異常な動きをします。その結果、膝関節内の軟骨や半月板が傷つき、**変形性関節症(関節炎)**が急速に進行します。
一度進行した関節炎は元に戻すことはできず、痛みの管理を続けるしかなくなります。さらに、膝をかばって歩くことで反対側の足や腰にも負担がかかり、二次的な整形外科疾患を引き起こすことも珍しくありません。


4. 診断方法

前十字靭帯断裂の診断には、身体検査と画像診断を組み合わせます。

  1. 触診(膝の安定性テスト)
    膝を前後に動かす「引き出し徴候」や「タロン徴候」で靭帯の状態を確認します。
    ※猫は力が強く筋肉も硬いため、犬に比べて検出が難しい場合があります。
  2. レントゲン検査
    靭帯そのものは写りませんが、関節の位置や骨の変化、関節炎の有無を確認します。
  3. 関節鏡や超音波検査
    専門設備があれば関節内部の詳細な確認が可能です。

ポイント
猫の場合、触診だけで確定診断が難しいケースが多く、整形外科に特化した病院や設備が必要になることがあります。


5. 治療方法

猫の前十字靭帯断裂の治療は保存療法外科手術に分けられます。

保存療法(手術をしない方法)

  • ケージレスト(安静)
  • 痛み止めや消炎剤の投与
  • 体重管理

部分断裂や軽症例では保存療法で改善することもありますが、完全断裂では十分な安定性を取り戻せないため、再発や悪化のリスクが高くなります。

外科手術 

猫の場合、犬よりも体重が軽いためシンプルな手術法で十分な安定性が得られることもあります。ただし、手術の成否は整形外科の知識・経験・設備に大きく左右されます。


6. 手術後の経過とリハビリ

手術後はすぐに歩けるわけではありません。

  • 手術後は安静が必須
  • 徐々に可動域訓練や筋力回復運動を行う
  • 完全回復まで時間がかかることもある

猫は安静にするのが難しいため、ケージやサークルでの生活制限が重要です。


7. 予防と早期発見のために

前十字靭帯断裂は完全な予防が難しいですが、リスクを減らす方法はあります。

  • 肥満防止(体重が軽いほど靭帯への負担は減る)
  • 高すぎる所からのジャンプを避ける
  • 激しい追いかけっこや取っ組み合いを控える
  • 年1回以上の健康診断と関節チェック

特に中高齢期(7歳以上)になると、靭帯の強度が低下するため、健康診断の際に整形外科チェックも組み込むことを強くおすすめします


まとめ

猫の前十字靭帯断裂は、決して犬だけの病気ではなく、室内飼いの猫でも起こります。
そして「自然に治るだろう」と様子を見ている間に、関節炎が進行して取り返しがつかなくなることがあります。
治療の成功には、早期発見・早期治療、そして必要に応じて整形外科専門の医療機関での手術が非常に重要です。

当院では毎週月曜日整形専門外来を行っています。

後ろが変。びっこ引いている。前十字靭帯断裂と診断された。保存療法で様子見ていたが、整形専門獣医師に診察してもらいたい。等ありましたらご相談ください。

当院では初診の方でもセカンドオピニオンの方でも1からしっかりとご説明させていただきます。

大切なご家族に寄り添ってしっかりとお話させていただきます。

もし愛猫が急に足をかばって歩くようになったり、ジャンプを嫌がるようになったら、それは単なる疲れや加齢ではなく、靭帯損傷のサインかもしれません。
気になる症状があれば、早めに動物病院で相談しましょう。