【要注意】犬猫の歯に潜むトラブル「埋伏歯」とは?気づかれにくい歯の問題に早めの対策を!

こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。
皆さんは、ワンちゃん・ネコちゃんの「歯の健康」、どのくらい気にかけていますか?
歯周病や歯石、乳歯遺残などがよく知られていますが、実は見逃されやすい「埋伏歯(まいふくし)」という歯のトラブルがあることをご存じでしょうか?

今回のケースは、歯石除去のため麻酔をかけ歯のレントゲンを撮ったところ発見されました。

普通の写真を見ると、前歯が2本しかないのですが(青色のマル)、歯科のレントゲン撮影をみたところ、2本歯が埋まっているのがわかります。(黄色のマル)

もちろん発見できてラッキー、悪さをする前に抜歯しました。

今回は、「犬猫の歯の健康」と「埋伏歯」について、詳しくご説明いたします。健康診断での早期発見の大切さにも触れながら、飼い主さんに役立つ情報をお届けします。


■ 犬猫の歯の構造と役割

犬や猫の歯は、食事の摂取はもちろん、狩りや遊び、グルーミング(毛づくろい)など、日常のさまざまな行動に関わっています。

<犬の歯の本数>

  • 乳歯:28本
  • 永久歯:42本

<猫の歯の本数>

  • 乳歯:26本
  • 永久歯:30本

乳歯は生後3〜6週齢ごろに生え始め、生後4〜6か月齢ごろに永久歯へと生え変わります。このとき正常に生え変わればよいのですが、何らかの理由でうまく生えず、歯ぐきや骨の中に残ってしまうことがあり、それが「埋伏歯」です。


■ 埋伏歯(まいふくし)とは?

● 定義

埋伏歯とは、本来生えてくるはずの永久歯や乳歯が、歯ぐきや骨の中に埋まったまま生えてこない状態を指します。外からは見えないため、痛みや炎症などの症状が出るまで気づかれにくいのが特徴です。

● 埋伏歯の原因

  1. 乳歯の遺残(抜けるべき乳歯が残っている)
  2. 歯が生えるスペースが足りない(特に小型犬に多い)
  3. 先天的に永久歯の数が少ない、もしくは異常な形である
  4. 外傷や発育異常による歯胚(歯の芽)の成長停止

これらの原因が重なると、歯が正常に萌出できず、顎の中や歯ぐきの下に「埋まった状態の歯」が取り残されることになります。


■ 埋伏歯が引き起こす問題

◯ 歯根嚢胞(しこんのうほう)

埋伏歯の周囲に液体がたまって袋状になった状態を「歯根嚢胞」といいます。放っておくと嚢胞が大きくなり、周囲の骨を圧迫・破壊する原因となります。

◯ 顔の腫れ・膿瘍(うみ)

嚢胞や感染が進むと、顔が腫れる・膿がたまる・穴が開くといった外見の異常が出ることもあります。これはすでに重度の状態です。

◯ 痛みや違和感による食欲低下

動物たちは痛みを隠すことが多いため、「いつもより食べるのが遅い」「固いものを嫌がる」などのささいな変化が唯一のサインになることもあります。

◯ 歯並びの乱れ・かみ合わせ異常

埋伏歯によって隣接する歯が押され、**歯列不正や咬合異常(噛み合わせの悪さ)**につながるケースもあります。


■ 埋伏歯が多く見られる犬種・猫種

特に小型犬や短頭種(鼻ぺちゃの犬)に多く見られます

  • トイプードル
  • チワワ
  • ポメラニアン
  • シーズー
  • パグ
  • ペキニーズ
  • ペルシャ猫
  • スコティッシュフォールド など

これらの犬猫は、顎が小さく歯の生えるスペースが不足しやすいため、埋伏歯や乳歯遺残が起こりやすいといわれています。


■ どうやって見つける?診断と検査方法

◯ レントゲン検査(X線検査)

埋伏歯は肉眼では確認できないため、デンタルレントゲンや全体の頭部レントゲンでの確認が必要です。特に若齢期に行うと、乳歯遺残や永久歯の異常萌出も一緒にチェックできます。

◯ 口腔内の視診・触診

歯の本数が少ない、左右で歯の位置が違う、歯ぐきの下に硬いふくらみがあるなど、違和感がある場合には早めの受診を。


■ 埋伏歯の治療法

◯ 外科的抜歯

問題のある埋伏歯は、手術によって取り除くのが基本です。麻酔下で歯ぐきを切開し、骨を削って歯を露出させ、丁寧に抜歯します。状況によっては歯根嚢胞の摘出も行います。

◯ 経過観察(無症状の場合)

完全に埋まっていて、炎症や痛みの兆候が一切ない場合は、レントゲンで定期的に状態をチェックしながら経過観察を行うこともあります

しかし、多くの場合は将来的なリスク(腫れや膿瘍)を考慮し、早期の処置が推奨されます。


■ 飼い主さんができること

✔ 定期的な口腔チェックを習慣に

日頃から愛犬・愛猫の口の中をチェックしましょう。
「歯の本数が少ない」「片側だけ歯が足りない」「腫れや痛みがある」などの異常に気づくことが大切です。

✔ 歯磨き中の異常に気づく

口を触られるのを嫌がる、歯ぐきが腫れている、出血があるなどは、埋伏歯以外の歯のトラブルのサインかもしれません。歯磨きは予防だけでなく早期発見にも役立ちます。

✔ 乳歯遺残を見逃さない

特に小型犬では、**永久歯が生えても乳歯が抜けずに残ることが非常に多いです。**そのままにしておくと、歯並びの異常や埋伏歯のリスクにつながるため、生後6か月ごろの口腔チェックはとても重要です。


■ 最後に:歯の健康は一生の健康につながる

犬や猫にとって、歯の健康は「命の質(QOL)」に直結します。
特に埋伏歯のような見えないトラブルは、症状が出るまで時間がかかり、気づいたときには手術が必要になってしまうケースも少なくありません。

だからこそ、定期的な健康診断やデンタルチェックを受けることが、ペットの幸せな暮らしに直結するのです。

「うちの子はまだ若いから大丈夫」ではなく、若いうちからのチェックこそが早期発見・早期治療の鍵です。歯の本数や位置に不安がある方は、お気軽にご相談くださいね。


🦷ご予約・ご相談

大田区大森のイース動物病院では、歯科専門外来も行っておりますので気になる症状があれば、ご相談ください。