猫の関節炎に気付こう
猫の関節炎とは?
こんにちは大田区大森イース動物病院です。関節炎は年齢とともに進行する、関節の軟骨が損傷し、骨や周辺組織に炎症を引き起こす疾患です。特に12歳以上の猫において90%以上が変形性関節症を患っているとされています。関節炎は直接命に関わる病気ではありませんが、痛みや不快感を伴い、猫の生活の質に大きな影響を与えます。
関節炎のメカニズム
- 軟骨の変性と破壊: 関節のクッションとなる軟骨が徐々に壊れ、関節の滑らかな動きを妨げます。
- 骨の硬化と増生: 軟骨の破壊により、骨が硬くなり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる尖った骨が形成されることがあります。
- 滑膜炎: 関節周辺の滑膜が炎症を起こし、痛みや腫れを引き起こします。
猫の関節炎の症状
猫は痛みを隠す傾向が強く、症状が顕在化しにくいことがあります。関節炎を患っている猫の中で、レントゲンで診断された猫のわずか4~16%が目に見える症状を示すといわれています。そのため、猫の関節炎を早期に発見することは難しく、進行してから症状に気づくことが多いです。
猫の関節炎チェックリスト
関節炎のサインを見逃さないために、以下のポイントに注目しましょう。
- ジャンプの高さが低くなった: 以前は簡単に高い場所に飛び乗っていたのに、最近ではあまりジャンプしなくなったり、90cm以上の高さに飛び乗れない場合、関節に問題があるかもしれません。
- 寝ている時間が増えた: 年齢や気候の影響もありますが、関節炎による痛みで活動量が減少し、眠っている時間が増えることがあります。
- ダッシュしなくなった: 急に走り出したり、狭いスペースをすばやく移動することが減った場合、関節に負担がかかっている可能性があります。
- 爪がうまく研がれていない: 活動量の低下に伴い、爪が適切に研がれなくなることがあります。
- 毛並みが悪くなった: 関節炎による痛みで、背中や腰周りをうまくグルーミングできなくなることがあり、毛がもつれたり、艶がなくなることがあります。
- トイレの動作に問題がある: トイレに行く際、うまくしゃがめない、もしくはトイレの外に排泄してしまう場合は、関節の痛みが原因であることが考えられます。
- 遊ばなくなった: おもちゃで遊ぶことが減少するのも、関節炎のサインです。活動的な猫が急に遊びたがらなくなった場合、注意が必要です。
関節炎の診断
関節炎は主にレントゲン診断されます。関節に炎症がある場合や、骨棘や関節内の石灰化が見られることで診断されることが多いです。
治療法
- 痛み止め(NSAIDs): 炎症を抑える薬として最も一般的に使用されますが、副作用として腎機能障害や胃腸障害が出る可能性があるため、低用量で長期間使用することが推奨されます。
- サプリメント: EPAやDHAを含むサプリメントが使用されることがあり、効果がある場合もあります。
- 新しい治療薬「ソレンシア」: 慢性的な関節炎に有効で、月に1回の注射で痛みを和らげる効果があります。2ヶ月目以降から効果が現れるとされ、他の治療と併用されることが多いです。
- リハビリや温熱療法: マッサージや温度療法、レーザー治療、運動療法なども併用され、猫の関節の負担を軽減する方法が取られています。
予防策とケア
肥満や過度の運動が関節に負担をかけるため、適切な体重管理と運動のバランスが重要です。定期的な健康チェックを行い、早期発見に努めましょう。
終わりに
関節炎は加齢によって避けられない場合もありますが、適切なケアと治療によって、猫の生活の質を大いに改善することが可能です。早期発見のためにも、日常の中で関節炎のサインを見逃さないようにしましょう。