🦷犬の歯が欠けるので注意!硬いガム、ヒヅメ、骨などのおやつ与えないで!!!
こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。
皆様お家のワンちゃんネコちゃんが「あれ?うちの子左右で歯の形が違うきがする‥‥」そんな風に感じたことありませんか?もしかしたら歯が欠けているかもしれません。
今回は、犬猫の歯が欠けてしまった時、どうしたらいいのか詳しく解説します。
一見、歯が少し欠けただけに見えても、実は非常に強い痛みや感染が進行しているケースも多く、注意が必要な病気です。
🦷実際の症例
柴犬7才の避妊メス。トリミングサロンに行って、トリマーさんに歯が欠けて痛そうです、と指摘されてご来院頂きました。
写真をご覧いただくと、縦に歯が裂けているのがわかります。

お話を伺うと、おやつに鹿の角をあげていたそうです。
鹿の角のおやつは、犬用おやつとして売っていますが、注意が必要です。
ほとんどのワンちゃんで歯が欠けたり折れたりするのは、この奥歯が一番多いケースですね。
🦷犬の歯が欠ける主な原因
実際、歯が折れてしまう犬の多くは「無意識のうちに」硬いものを噛んでしまっています。
よくある原因を挙げてみましょう。
・ヒヅメ、骨、硬いガム、硬いチーズなどを噛む
・金属製ケージやフェンスをかじる
・ボールなど硬いおもちゃを強く噛む
・転倒や事故、外傷
・歯の質が弱っている(高齢、歯周病など)
特に多いのが「ヒヅメ」や「骨」を噛んで折れてしまうケース。
「自然のものだから安全」と思われがちですが、実際には人間の歯でも割れるほどの硬さがあり、犬の歯にも大きな負担がかかります。
歯磨き代わりになると思って与えていたおやつが、歯を折ってしまう原因になっていることも少なくありません。
🦷歯が折れるってどういう事?
歯が欠けたり、割れたりすることを破折(はせつ)といいます。
犬や猫の歯は、表面が硬いエナメル質、その下に象牙質、さらにその中心には神経と血管が通う“歯髄(しずい)”があります。
つまり、欠けた部分がどの層まで達しているかによって、症状の重さや治療法が大きく変わるのです。
犬の場合、破折が最も多いのは「上顎の犬歯(大きなキバ)」と「上顎第4前臼歯(奥歯の中で最も大きい歯)」(症例写真📸)です。
これらは噛む力が集中しやすく、特に硬いおもちゃやガムを好む犬で多発します。
🦷 歯の神経が出ちゃう?劇痛!!!
歯が欠けたとき、内部の神経(歯髄)が露出してしまう状態を「露髄」といいます。
人間でいうと“虫歯が神経まで達している状態”に近く、非常に強い痛みを伴います。
神経がむき出しになると、口の中の細菌が入り込み、炎症を起こして「歯髄炎」になります。
さらに進行すると、歯の根の先に膿が溜まって「根尖膿瘍(こんせんのうよう)」を起こし、
頬が腫れたり、鼻から膿が出たりすることもあります。
🦷 露髄のサインと見た目
露髄を起こした歯では、次のような症状が見られます。
・歯の表面にピンク色の点や線が見える
・破折部分が黒く変色している
・片側でしか噛まなくなる
・硬いものを食べなくなる
・顔を触ると嫌がる
・よだれが増える、顔の腫れ
特にピンク色が見える場合は、ほぼ確実に神経が露出しています。
また、見た目には小さな欠けでも、内部で神経まで達しているケースも多く、
**「見た目では判断できない」**のがこの病気の怖い点です。
■ 放置するとどうなるの?
露髄を放置すると、痛みを我慢して食べ続けてしまう犬もいますが、実際には慢性的な炎症が続いています。
やがて歯髄が壊死して膿がたまり、顎の骨にまで炎症が及ぶケースもあります。
中には、目の下が腫れたり、皮膚に穴が開いて膿が出てくることも。
ここまで進行すると、抗生剤だけでは治りません。
感染した歯を抜く、あるいは根管治療(歯の内部の治療)を行う必要があります。
■ 治療法
露髄を伴う破折歯の治療法は主に2つです。
① 抜歯
感染が進行しており、歯を残すことができない場合。
痛みと感染を取り除くために、抜歯が必要になります。
② 根管治療(歯内治療)
歯の根が健康な場合には、神経を除去して歯を残す治療が可能です。
ただし、専門的な技術と設備を要するため、更に歯科専門の動物病院のご紹介になります。1本20~30万円程、と思われます。
いずれの場合も、処置後は感染予防と痛みのコントロールが大切です。
また、治療した後も定期的に歯科チェックを受け、再発を防ぐことが必要です。
■ 猫にも起こる「歯の破折」
猫では、犬ほど多くはありませんが、落下事故や吸収病巣(歯が溶ける病気)と併発して見られることがあります。
特に、奥歯の吸収病巣が進行して破折し、そこから痛みが強くなるケースもあります。
猫は痛みに非常に敏感ですが、痛みを隠す動物です。
「ごはんを食べなくなった」「口を触らせない」「片側でしか噛まない」などの変化があれば、要注意です。
■ 健康診断での早期発見が大切
破折や露髄は、見た目では気づかれにくい病気です。
そのため、**定期的な健康診断(口腔内チェック)**が非常に重要です。
歯科診断では、以下のような点をチェックします。
・歯の欠けや変色の有無
・歯石の付き具合
・歯肉の炎症や出血
・歯周ポケットの深さ
・レントゲンでの歯根や歯髄の状態
特にレントゲン検査は、見た目ではわからない内部の感染を発見する上で欠かせません。
早期に見つければ、抜歯せずに治療できるケースもあります。
■ 飼い主様にできる予防とケア
日常生活の中でも、飼い主様にできる予防法はたくさんあります。
・硬すぎるおもちゃ(ヒヅメ・骨・石など)を与えない
・歯磨きを習慣化する
・歯磨きが難しい場合はデンタルシートやデンタルガムを併用
・定期的に動物病院で歯科チェックを受ける
・口臭や歯の変色に気づいたら早めに受診
歯の健康は、食欲や内臓の健康にも直結します。
特にシニア期の犬猫では、歯の痛みが原因で体重が減ったり、腎臓病などの慢性疾患を悪化させることもあります。
■ まとめ
犬猫の歯の破折、とくに「露髄」を伴うケースは、強い痛みと感染を伴う重大な歯の病気です。
見た目は小さな欠けでも、内部では深刻な炎症が起きていることがあります。
放置すれば抜歯が必要になることもありますが、早期に発見できれば、歯を残せる可能性もあります。
そのためにも、年1~2回の健康診断と歯科チェックをおすすめします。
「歯が欠けたかも?」
「最近、硬いものを噛まなくなった」
そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
痛みを我慢している子のために、早めの受診が大切です。
イース動物病院では、歯科専門外来も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

