ストレスが原因?短頭種に見られる“舐性皮膚炎”の意外な背景
こんにちは!大田区大森にあるイース動物病院です。
今回は、短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなど)に多く見られる皮膚トラブルの中でも、**「舐性皮膚炎(しせいひふえん)」**という、少し珍しい皮膚疾患についてお話しします。
「気がついたら、うちの子がいつも同じ場所をペロペロ舐めている」
「赤くなって毛が抜けてるけど、痒みが原因じゃなさそう…?」
そんなお悩みをお持ちの飼い主さま、もしかしたらそれは**“ストレス”が関係している皮膚トラブル**かもしれません。
舐性皮膚炎ってどんな病気?
舐性皮膚炎は、わんちゃんが自分で特定の部位を繰り返し舐めることで起こる皮膚炎のことです。
最初は小さな違和感やストレスによる「癖」だったものが、徐々にエスカレートし、皮膚が赤くただれてしまったり、毛が抜けてしまったり、時には傷が化膿してしまうこともあります。
特に前肢(手首の内側)や足先、側腹部、太ももなどに多く見られ、対称性に舐めることが多いのが特徴です。
短頭種に多い理由とは?
舐性皮膚炎はどの犬種でも起こり得ますが、パグやフレブルなどの短頭種ではやや高い頻度で見られる傾向があります。
その理由として、いくつかの要因が考えられます:
1. 感情表現が豊かで繊細
短頭種は、性格的に非常に人懐っこく、感情の起伏も分かりやすい犬種が多いです。飼い主の不在や生活環境の変化などに敏感に反応し、不安やストレスを感じやすい傾向があります。
2. 暇になりやすい=行動の代償行為
短頭種は体格の都合上、激しい運動が苦手な子も多く、「散歩に行けない日が続く」「一人でお留守番が多い」といった状況になると、エネルギーの発散先がなくなってしまいます。そういった場合、舐める行動が“自己刺激”の手段になってしまうことがあります。
3. 遺伝的要素や体質
短頭種に共通する皮膚のバリア機能の弱さやアレルギー体質が関係している可能性もあります。最初は軽い痒みや違和感がきっかけとなり、そこに精神的な要因が加わって悪化していくケースも見られます。
痒みではなく「癖」の可能性
皮膚病というと、「痒いから舐める」「赤くなったから舐める」と思われがちですが、舐性皮膚炎のやっかいなところは、**“痒くなくても舐めてしまう”**という点です。
最初は皮膚のトラブルがきっかけだったとしても、そのうちに習慣化してしまい、「舐めること自体が目的」になってしまうのです。
このような状態になると、薬や外用薬で皮膚が治ってきても、「なぜかまた舐め続けている…」という悪循環に陥ることも少なくありません。
治療・対処法
舐性皮膚炎の治療には、皮膚のケアと行動のケアを両立させることがとても重要です。
1. 皮膚の状態を整える
まずは二次感染(細菌・マラセチア)や炎症がある場合、適切な治療を行います。抗菌薬や外用薬、必要に応じて抗炎症薬(ステロイド等)を使用することもあります。
皮膚が回復していく過程で、保湿ケアやスキンケアシャンプーなども併用していくと効果的です。
2. 舐めない工夫をする
患部にエリザベスカラーをつけたり、靴下やサポーターを活用したりして物理的に舐められないようにすることも大切です。
ただしこれはあくまで「一時的な手段」なので、根本的な原因を解決することが必要です。
3. ストレスケア・環境の見直し
実はここが一番のポイントです。
- 一日の運動量は足りているか?
- お留守番の時間が長すぎないか?
- 家庭内の環境(音、におい、来客など)に過敏に反応していないか?
- 飼い主さんとのスキンシップは十分か?
このような生活面での見直しが、舐性皮膚炎の改善につながることが多くあります。
また、重度の場合は、**抗不安薬や行動療法、フェロモン製剤(アダプティル等)**などを使用するケースもあります。
舐める=“心のSOS”かもしれません
舐性皮膚炎は、「皮膚の病気」というよりも、“行動の問題”と“皮膚の問題”が絡み合った複雑な疾患です。
そしてその背景には、わんちゃんなりの「不安」や「ストレス」、あるいは「退屈」や「欲求不満」が隠れていることが多くあります。
飼い主さんが「うちの子、また舐めてるな…」と気づいたとき、それは身体だけでなく心のケアが必要なサインかもしれません。
まとめ
短頭種に多く見られる舐性皮膚炎は、ストレスや習慣化が原因となることが多く、一般的な皮膚炎とは少し違うアプローチが求められる疾患です。
皮膚の治療だけでなく、日々の生活環境やわんちゃんのメンタルケアまで視野に入れて対応することで、根本からの改善を目指すことができます。
「最近、よく同じ場所を舐めてるな」「皮膚が治ってもまたすぐ再発する」といったことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
イース動物病院では、皮膚疾患はもちろん、行動や生活環境のご相談にも対応しております。
大切な家族であるわんちゃんの“心と体”を、一緒に守っていきましょう。
大田区、大森、蒲田で皮膚疾患についてお悩みのことがありましたらイース動物病院までご相談ください!!