「犬猫の虫歯が少ない?!」—犬猫の歯と歯周病について

こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。ペットとして犬や猫を飼っている方の多くが、歯の健康について深く考えていないかもしれませんが、実はとても重要な問題です。特に犬猫では虫歯が人間ほど多くないとされていますが、これには特有の理由があります。しかしながら、それに代わるように犬猫では歯周病が非常に多く見られ、放置すると深刻な健康問題につながる可能性があります。今回は、なぜ犬猫に虫歯が少ないのか、そして歯周病のリスクや予防方法について詳しく見ていきましょう。

なぜ犬猫には虫歯が少ないのか?

人間の口腔内では、食物の残りかすが歯の表面に付着し、そこに虫歯菌(ミュータンス菌)が働くことで酸が生成され、歯が溶けて虫歯が発生します。しかし、犬や猫の場合、虫歯が発生しにくい理由はいくつかあります。

  1. 食生活の違い 犬や猫は肉食傾向が強いため、人間のように糖分を多く含んだ食品を摂取することがほとんどありません。糖分が口腔内に残留すると、虫歯菌のエサとなり、酸を生成することで虫歯を引き起こします。犬猫の食事では、この糖分が少ないため、虫歯のリスクが低いのです。
  2. 口腔のpHレベルが高い 犬猫の口腔内は、人間と比べてアルカリ性が高い傾向にあります。アルカリ性の環境では酸が生成されにくいため、虫歯が発生しにくくなっています。
  3. 歯の形状と咀嚼の仕方 犬や猫の歯は、肉を切断したり、骨をかみ砕いたりするために発達しており、人間のように食物を細かくすり潰すことは少ないです。これにより、食べ物が歯に残りにくく、虫歯の原因となる食べかすが蓄積しにくいという特性があります。

犬猫に多い歯周病とは?

虫歯は少ないものの、犬や猫では「歯周病」が非常に一般的です。実際、3歳以上の犬猫の約80%が何らかの歯周病にかかっているとされています。歯周病は、歯と歯茎の間にプラークや歯石が溜まり、歯茎や周辺の組織が炎症を起こす病気です。進行すると歯を支える骨や歯茎が破壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

歯周病の原因

  1. プラークと歯石 犬や猫の歯に付着するプラークは、食べかすや細菌から形成されます。これが時間が経つと硬化し、歯石となります。特に犬猫の唾液はカルシウムが豊富で、プラークが歯石に変わる速度が早いため、定期的な歯のケアが必要です。
  2. 不適切な口腔ケア 人間同様、犬や猫も口腔内のケアが不十分だと、歯周病のリスクが高まります。自然界では肉や骨をかじることである程度の自然な歯磨き効果が得られますが、現代のペットの多くはドライフードやウェットフードが主な食事となり、自然な歯磨きの機会が少なくなっています。
  3. 年齢 歳を取るとともに、歯茎や歯の健康状態は悪化しがちです。高齢の犬猫では、歯周病のリスクが特に高くなります。

歯周病の症状

歯周病の初期段階では、以下のような軽微な症状が見られることがあります。

  • 口臭
  • 歯茎の赤みや腫れ
  • 歯の周りに黄ばみや茶色い歯石が付着している

これらの症状が進行すると、より深刻な問題が発生します。

  • 食欲不振
  • 口を痛がる仕草
  • 歯がぐらつく、抜ける
  • 顔が腫れる(特に歯周病が進行して膿がたまる場合)

歯周病のリスクと全身への影響

歯周病は単なる口腔内の問題にとどまらず、全身に影響を与える可能性があります。口腔内で炎症が続くと、細菌が血流に乗って全身に広がり、心臓病、肝臓病、腎臓病といった内臓疾患を引き起こすことがあります。また、免疫力の低下も伴うため、他の病気にかかりやすくなるリスクも高まります。

犬猫の歯周病の予防方法

  1. 定期的な歯磨き 犬や猫の歯磨きは、歯周病予防の最も効果的な方法の一つです。専用のペット用歯ブラシや歯磨き粉を使用して、少なくとも週に数回、可能であれば毎日ケアを行うのが理想的です。
  2. 定期的な歯科検診 動物病院での定期的な歯科検診は、歯周病の早期発見と治療に役立ちます。特に高齢のペットや、口臭や歯茎の腫れが気になる場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
  3. デンタルケア製品の使用 市販されているデンタルケア製品(デンタルガム、デンタルスプレー、口腔ケア用フードなど)を活用することで、プラークの蓄積を抑えることができます。ただし、これらはあくまで補助的なケアであり、歯磨きや定期検診と併用することが重要です。
  4. 食事の工夫 ドライフードを選ぶ際には、歯にこびりつきにくいものや、デンタルケア効果が期待できるものを選ぶことができます。また、固めのおやつや噛むことによって歯石除去効果のある商品を利用するのも良いでしょう。

まとめ

犬や猫にとって虫歯はそれほど大きな問題ではないものの、歯周病は非常に一般的で、全身の健康に影響を及ぼす可能性のある深刻な病気です。ペットの口腔ケアを怠ると、将来的に痛みや不快感、さらには重大な健康問題につながる恐れがあります。定期的な歯磨きや動物病院での歯科検診を習慣化し、愛犬・愛猫が健康で快適な生活を送れるよう心がけましょう。

当院では毎週木曜日に歯科専門外来を行なっております。是非お問合せください。