愛猫が足を引きずる!|考えられる原因と対処法を獣医師が解説

愛猫があまりジャンプをしなくなった、寝てばかりいるといった場合には、足を引きずっていないかどうかなど、歩き方をよく観察してみてください。
猫が足を引きずる原因は多岐にわたり、早期に治療を行わなければ歩けなくなってしまうケースもあります。しかし、猫は痛みや不快感を隠す傾向にあるため、日頃の小さな行動の変化や違和感をいち早く発見することが重要です。

今回は、猫が足を引きずる原因や適切な対処法についてご紹介します。

■目次
1.症状の見分け方
2.考えられる主な原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法
6.まとめ

症状の見分け方

症状が軽度の場合は足先が地面に軽く擦れる程度で、足を引きずりながらも体重をかけることができます。しかし、重度の場合は体重を全くかけることができず、足に力が入らずに立てなくなってしまったり、足をだらんとさせて引きずったりします。

また、症状が突然発症した場合は外傷やケガによる痛みが原因である可能性が高く、逆に徐々に症状が悪化している場合には、関節炎や神経学的問題が疑われます

症状が片足のみであれば外傷やケガが、両足に症状が見られる場合は神経学的問題が疑われます。整形外科的問題が原因の場合は、片足にのみ症状が現れるものもあれば、複数の足に見られることもあります。

ただし、猫は痛みや不快感を隠す習性があるため、これらの症状が見られる頃にはかなり進行している可能性が考えられます。愛猫が動きたがらずに寝ていることが増える、高い場所に飛び乗れない、食欲が落ちた、隠れてなかなか出てこないなどの行動の変化が見られることもあるため、これらのサインを見逃さないようにしましょう。

考えられる主な原因

猫が足を引きずっている原因は、以下が考えられます。

<外傷・ケガ>

・肉球の傷
・爪の損傷
・筋肉や腱の損傷
・骨折

<整形外科的問題>

・股関節形成不全
・変形性関節症(関節炎)
・膝蓋骨脱臼

<神経学的問題>

・椎間板ヘルニア
・大腿神経障害

診断方法

まずは問診を行い、症状の経過や生活環境、既往歴などを詳細にお伺いします。そして問診で得た情報を元にある程度原因の目星をつけます。

その後、視診や触診、歩様検査といった身体検査を行います。ただし、猫は診察が苦手な子も多く、これだけではあまり情報を得られないことがあります。そのため、レントゲン検査を行うケースが多く、さらに必要に応じてCT・MRI検査、血液検査、関節液検査なども行います。

治療方法

主な治療方法は薬物療法(消炎鎮痛剤、抗生物質など)や外科的治療です。また、整形外科的問題や神経学的問題が原因である場合はリハビリテーションを行うこともありますが、猫の性格によってはリハビリが難しいこともあるため、かかりつけ医とよく相談しましょう。

予防法

肥満や筋力の低下は足に負荷をかけてしまうため、日頃から運動と体重管理をしっかり行いましょう。猫は犬と違い散歩が難しいため、室内にキャットタワーやキャットウォークを設置したり、おもちゃなどを使って上下運動をさせたりして、室内でも運動量を確保できるよう工夫しましょう。

さらに、猫の場合は完全室内飼育をすることで外傷やケガのリスクを下げることができます。

また、定期的な爪切りと肉球のケア(クリームを塗るなど)を行うことで、足回りのケガを予防することも大切です。ご自宅での爪切りが難しい場合には、動物病院やサロンで、プロの手を借りるのも一つの手です。

しかし、どんなに対策をしていても、ケガを完全に予防することはできません。そのため、定期的に健康診断を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう

まとめ

猫が足を引きずる原因は多岐にわたります。しかし、原因を問わず、早期発見・早期治療を行うことで、愛猫の痛みを最小限に抑えたり、悪化のリスクを下げたりすることができます。また、猫は痛みや不快感をギリギリまで我慢する傾向にあるため、定期的に健康診断を受け、なるべく早い段階で対処できるように心がけましょう。また、日頃からよく足を触ったり歩き方をチェックしたりする習慣をつけ、何か異変を感じた場合は早めに動物病院を受診するようにしましょう。


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