犬と猫と腸活と⑤

本シリーズもいよいよ5回目を迎えました。

今日は、実際に腸活サプリを選ぶ上でのポイントをお伝えしたいと思います。

過去のシリーズはこちら ↓↓

サプリを選ぶ上で考える事

では実際に腸活を開始する上で、何を重視したら良いのでしょうか? 一番は、飼われているワンちゃん・ネコちゃんの便から、実際の腸内フローラを調べてみる事が良いとか思います。

最近では飼い主様向けに検査キッドを販売しているメーカー様も増えてきていますが、いくつかの検査会社は結果が出るまで1ヶ月ほど期間を要します。

当院ではおよそ1週間以内に結果がわかる検査を実施をしています。

腸内の状態により使い分け

  • 善玉菌補強型:多様性は保たれているが、善玉菌が少ない状態

対策:(例えば皮膚強化とか)目的があるなら、それに合わせたプロバイオティクス。死菌でもOK

  • 多様性補強型:善玉菌と悪玉菌の比率は良さそうだが、菌の種類が少ない。

対策:複数種類のプレバイオティクス。プロバイオティクスとして死菌補給もOK 。

  • 多様性/善玉菌補強型:善玉菌の割合も少なく、多様性も欠けている型

対策:複数種類のプロバイオティクス(生菌)と複数種類のプレバイオティクス 。

また、お悩みな症状(アレルギー性皮膚炎や長い間の下痢など)がある場合、その目的に合ったサプリメントを選ぶ事もおすすめしています。

プロバイオティクスの選択

プロバイオティクスを選択する上での基本は生菌製剤を用いるか死菌製剤を用いるかという事です。

この2つの特性を理解した上で使い分けして頂く事が大切です。

生菌:生きた菌

文字通り生きているため、腸内の構成メンバーに影響を与えます。生きた乳酸菌は抗菌活性の働きがあり、悪玉菌の増殖を抑制する効果腸内環境の改善に貢献します。腸内の善玉菌がほぼ枯渇している場合など、多数の善玉菌が必要な際には積極的な摂取が必要となります。 ただし継続的に複数種を高濃度で摂取する必要があります。オリゴ糖などのプレバイオティクスとの併用で大きく効果が向上するため、併用は必須と言えます。

生菌メリット

・腸内で生きて活躍する

・抗菌活性により感染症対策に貢献

・一定期間定着する(種類や環境にもよる)

生菌デメリット

・生きて腸まで届かせる工夫がされているため高額

・温度や胃酸の影響を受ける(何割かは途中で死菌となる)

・抗生物質の影響を受ける

死菌:死んだ菌

死菌は乳酸菌などの死骸です。生物(なまもの)ではないため品質が安定しており扱いやすく、腸内でも安定的な影響を与える傾向があります。死んでいるため、他の有益な細菌たちのエサとなったり、腸壁に取り付いて免疫を刺激するなど、生きた乳酸菌とはまた違った働きをします。

死菌は製造や管理のしやすさから単価が安く、よって同じ価格でも多量を摂取できるメリットがあります。ただしそもそもの働きが異なるため、菌数で比較するのはミスリードとも言えます。

死菌のメリット

・安定して効果が得られる

・単価が安い

・胃酸の影響を受けない

死菌のデメリット

・生きて働くわけではない

・腸内環境の悪化がひどい場合は力不足

・あくまで補助的な存在

プレバイオティクスの選択

プレバイオティクス(オリゴ糖など)の選択でポイントとなるのが、単一のものを選ぶか複数の種類のものを選ぶかです。これは、目的や個々の腸内環境によって異なります。

単一のプレバイオティクス

メリット  

ターゲット効果:ある特定の善玉菌を増やしたい場合、その菌が好む特定のプレバイオティクスを摂取することで効果を期待できます。例えば、動物分野においては、ラクトバチルス パラカゼイとケストースの組み合わせにより皮膚アトピー性皮膚炎の緩和効果が報告されています。

・シンプルな摂取:効果や副反応を把握しやすく、特定のプレバイオティクスが自分に合っているかを確認しやすくなります。特にプレバイオティクスは“可溶性繊維”であるため、便を柔らかくする効果があります。効きすぎると下痢となる事もあるので、体に合ったプレバイオティクスを選ぶ事が重要です。

デメリット

・多様性の欠如:腸内環境の多様性を高めるためには、単一のプレバイオティクスでは不十分な場合があります。これは個々のプレバイオティクスにより微妙に増える菌種が異なるからです。

複数のプレバイオティクス

メリット

・腸内フローラの多様性:複数のプレバイオティクスを摂取することで、異なる種類の善玉菌をサポートし、腸内フローラの多様性を高めることが期待できます。

・総合的な健康効果:異なるプレバイオティクスが持つ様々な健康効果を総合的に得ることができます。

デメリット

・複雑さ:効果や副作用を評価するのが難しくなることがあります。

・不明点:動物医療においては、まだこの分野については発展途上という段階です。どのプレバオティクスがどの菌を優位に上昇させるかについて不明なことがたくさんあります。

まとめ

ここまでサプリを選ぶポイントをざっくりとお話ししてきました。

私個人的な見解として、何か気になる症状はないけれど、腸活をとりあえず始めてみたいという方は、「複数のプレバイオティクス(オリゴ糖)」「死菌を用いたプロバイオティクス」から初めてみても良いかなと思います。

また、皆様の大切なワンちゃん・ネコちゃんの腸内フローラを1度確認してみる事もお勧めします。

腸活についてもっと詳しく知りたいという飼い主様がいらっしゃいましたら、当院獣医師までご相談ください。

バックナンバー↓↓

犬と猫と腸活と①(腸内環境とは?)

犬と猫と腸活と②(プロバイオティクスについて)

犬と猫と腸活と③(プレバイオティクスについて)

犬と猫と腸活と④(腸内酸素について)