猫ちゃんの歯、ちゃんとケアできていますか?
こんにちは。大田区の大森イース動物病院です。
猫ちゃんに歯磨き、していますか?
できていたら、それは本当に素晴らしいことです。尊敬します。
…でも、実は私の経験上、猫に歯磨きができている飼い主さんは100人中5人くらい。つまり、95%以上の猫ちゃんは、歯のケアが十分にできていないという現状があります。
しかし、猫の歯の健康は、猫自身の**寿命や生活の質(QOL)**にも直結します。
今回は、猫の歯の病気やケアの方法、そして「何から始めれば良いのか」について詳しくお話しします。
歯磨きできなくても大丈夫。でも“放置”はNG!
「歯磨きができないならもう諦めるしかない」と思っていませんか?
実は、歯磨きができなくても、きちんと対策はあります。
それが、5〜7歳のうちに一度、全身麻酔でのスケーリング(歯石取り)を受けることです。
歯磨きが苦手な猫でも、この処置によって歯石や歯垢をしっかり取り除き、必要な歯を抜歯することで、口内環境を大きく改善することができます。
歯の健康を放っておくと、将来的に「何本もまとめて抜歯しなければならない」というケースも少なくありません。
そのリスクを減らすために、早めの対応がとても大切なのです。
猫の歯周病ってどんな病気?
猫の口の中には、私たち人間と同じようにたくさんの常在菌が住んでいます。
この常在菌の中には、悪玉菌も含まれており、これが歯垢と結びつくことで歯周病が始まります。
歯周病の流れは以下の通りです:
- 歯垢がたまる
- 歯垢の中の細菌が炎症を起こす
- 歯茎が腫れる・赤くなる
- 歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)ができる
- 歯を支える骨(歯槽骨)が溶ける
- 歯がグラグラする、抜ける
進行すると、猫の口臭がひどくなったり、ごはんを食べにくくなったり、口を触るのを嫌がるようになったりします。
猫に多い「吸収病巣(FORL)」とは?
猫には「吸収病巣(きゅうしゅうびょうそう)」という特殊な病気があります。
これは歯の一部が徐々に溶けていく病気で、10頭中3頭くらいに見られると言われています。
歯の表面が崩れていき、やがて神経が剥き出しに。
そうなると猫は強い痛みを感じ、ごはんを食べることが困難になってしまいます。
見た目にはわかりにくく、レントゲンを撮らないと判断が難しい場合もあるため、定期的なチェックがとても重要です。
歯の病気がもたらす意外な影響
歯周病や吸収病巣を放っておくと、口の中だけの問題では済まなくなることもあります。
- ごはんを食べづらくなる
- 栄養が不足する
- 痛みや不快感から性格が変わる(攻撃的になるなど)
- 慢性的な炎症が全身に悪影響を及ぼす
特に高齢猫では、心臓や腎臓に負担がかかることもあるため、「口の中の炎症=全身のリスク」と捉える必要があります。
猫の歯のケア、どうすればいい?
歯のケアには段階があります。できることから始めましょう。
1. スケーリング(全身麻酔)
まずは、5〜7歳のうちに一度スケーリングを行うのがおすすめです。
歯石や歯垢を取り除き、必要な歯は抜歯します。
年齢が上がると麻酔のリスクも高まるため、若いうちの処置がベストです。
2. 歯磨き習慣をつける
理想は毎日の歯磨き。難しくても、3日に1回でも効果があります。
特に処置後のキレイな歯を保つには、歯磨きが一番です。
まずは口元を触る練習から始めましょう。
嫌がる前にやめて、褒めて終わる。それが習慣化のコツです。
3. 歯磨きが難しい場合の代替ケア
- 歯磨きシート
- 歯磨きおやつ
- デンタルサプリ
- 歯に優しいフード
これらは歯磨きの代わりにはなりませんが、補助としては有効です。
「何もしないよりは、やった方が確実に良い」と考えてください。
飼い主さんに伝えたいこと
「歯が悪くなったら抜けばいい」と思っていませんか?
実は猫にとって、抜歯は大きな負担です。
歯が1本でもなくなると、噛み方や食べ方が変わる猫もいます。
そして、高齢になってからの全身麻酔はリスクも高まります。
だからこそ、若いうちに歯のチェックをして、悪くなる前に対処することが大切なんです。
まとめ:猫の歯を守ることは、命を守ること
猫の歯の健康は、体の健康、そして命そのものにも関わる大切なことです。
- 歯周病や吸収病巣はとても多い
- 放置すると生活の質が低下する
- 早めのスケーリングと、できる範囲のケアが大切
「うちの子、もうすぐ5歳だけど大丈夫かな?」
「最近口が臭うかも…」という方は、ぜひ一度大田区大森のイース動物病院にご相談ください。
猫ちゃんの未来の健康のために、今できることを一緒に考えていきましょう。