犬猫の歯科疾患が全身に与える影響について

こんにちは。東京都大田区大森のイース動物病院です。皆様、愛犬や愛猫の口の中は見たことがありますか？歯みがきなどのケアをしていないと気が付いた時には結構歯石が付いていたりします。今日は、そんな歯周病が全身にどんな影響を与えることだあるのか、詳しくお話したいと思います。

1. 歯科疾患の概要

犬猫にとって、口腔ケアは飼い主が見落としがちな健康管理の一部です。しかし、実際には口腔内の健康状態が全身の健康に密接に関わっています。歯科疾患、特に歯周病や歯石の蓄積は、単に口の中の問題にとどまらず、全身に影響を与えることがあるため、早期の予防と治療が極めて重要です。

2. 犬猫における歯科疾患の主な種類

犬猫でよく見られる歯科疾患には、以下のようなものがあります。

• 歯周病
  歯周病は歯茎に炎症を引き起こし、歯を支える組織を破壊する病気です。歯垢や歯石が原因で歯茎に炎症が起こり、進行すると歯が抜けることもあります。歯周病は犬猫にとっても非常に一般的な問題であり、3歳以上の犬猫の約80％がなんらかの歯科疾患を持っていると言われています。
• 歯石の蓄積
  歯石は歯に付着した歯垢が硬化したものです。歯石が蓄積すると、歯茎を圧迫し炎症を引き起こし、歯周病の原因になります。歯石の除去は定期的なデンタルケアで防ぐことができますが、ひどい場合は獣医による歯石除去が必要になります。
• 乳歯遺残
  乳歯が抜けずに残ってしまうことで、成犬や成猫の歯並びに影響を与え、歯垢の蓄積や歯周病のリスクを高めます。この状態は特に小型犬や猫に多く見られます。

3. 歯科疾患が全身に与える影響

歯科疾患、特に歯周病は、口腔内だけでなく、全身の健康にも影響を与えることが科学的に証明されています。主な影響として、以下のようなリスクがあります。

3.1 心臓への影響

歯周病が進行すると、口腔内の細菌が血液に入り込み、心臓に悪影響を及ぼすことがあります。特に、弁膜に炎症が起きる「感染性心内膜炎」や、心臓の弁が損傷する「弁膜症」のリスクが高まります。これらの疾患は、特に高齢の犬猫にとっては命にかかわる可能性があるため、定期的な口腔ケアは非常に重要です。

3.2 腎臓への影響

歯周病が腎臓に悪影響を与えることも報告されています。口腔内の細菌が血流を通じて腎臓に到達し、腎臓組織に炎症を引き起こすことで、慢性腎臓病（CKD）のリスクを高めます。特に猫は腎臓病にかかりやすいため、口腔内の健康管理が腎臓の健康維持にもつながります。

3.3 肝臓への影響

口腔内の細菌が肝臓にも影響を及ぼすことが確認されています。歯周病が進行し、口腔内の炎症が肝臓に広がると、「肝炎」を引き起こす可能性があります。肝臓の機能が低下すると、全身の代謝や解毒作用がうまく働かなくなり、さらに病気を悪化させる恐れがあります。

3.4 肺への影響

口腔内の細菌が肺に移行し、肺炎を引き起こすこともあります。特に高齢や免疫力が低下した犬猫では、口腔内の感染が呼吸器系に影響を与えやすく、肺炎のリスクが高まります。

4. 歯科疾患の予防法

歯科疾患の予防には、日常的なデンタルケアと定期的な獣医の診察が欠かせません。以下に、具体的な予防策を紹介します。

4.1 デンタルケアの習慣化

飼い主による定期的なデンタルケアが、歯科疾患の予防に最も効果的です。特に、歯磨きは最も基本的かつ効果的な方法です。歯磨きを始める際は、犬猫に慣れさせることが大切で、初めての場合は少しずつ慣らすことが重要です。専用の歯磨き粉や歯ブラシ、デンタルガムも活用するとよいでしょう。

4.2 歯科用フードやガムの活用

デンタルケア効果のあるフードやガムを取り入れることも、歯石の蓄積を防ぐ手助けになります。これらの製品には、噛むことで歯の表面を清掃する効果があり、歯石や歯垢の予防に役立ちます。

4.3 定期的な歯科検診

犬猫の歯科疾患は早期に発見することが肝心です。定期的に獣医に診察を受け、歯や歯茎の状態をチェックすることが重要です。特に高齢になるほど歯科疾患が進行しやすいため、少なくとも年に一度は歯科検診を受けることが推奨されます。

5. まとめ

犬猫の歯科疾患は、単に口の中の問題にとどまらず、全身に影響を及ぼす可能性があります。特に心臓や腎臓、肝臓、肺への悪影響が報告されており、歯周病を放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。日常的なデンタルケアと定期的な歯科検診を通じて、早期に予防・治療を行うことが、犬猫の長寿と健康を守るために重要です。飼い主として、口腔ケアにしっかりと取り組むことで、大切なペットが健康で幸せな生活を送る手助けができるでしょう。当院では、毎週木曜日に歯科専門外来を行っておりますので気軽にお問い合わせください。