放置は危険!犬猫の乳歯遺残と定期健診の大切さ
こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。
今回は「犬猫の乳歯遺残(にゅうしいざん)」について詳しくお話ししたいと思います。乳歯遺残は一見すると大きな問題ではなさそうに見えますが、実は放置すると口腔内の環境を大きく悪化させ、後々大きな病気につながることがあるため注意が必要です。そして、この乳歯遺残を早期に発見するためにも、定期的な健康診断がとても重要になります。
◆ 乳歯遺残とは?
犬や猫は人間と同じように、子どもの時期に「乳歯」が生え、その後「永久歯」に生え替わります。通常、犬では生後6~7か月、猫では生後5~6か月ごろまでに乳歯から永久歯への交換が完了します。しかし、中には乳歯が抜けずに永久歯と一緒に残ってしまうことがあります。これを「乳歯遺残」と呼びます。
乳歯遺残は特に小型犬や猫に多く見られ、チワワ、トイプードル、ヨークシャーテリアなどの犬種でよく問題になります。
◆ 乳歯遺残が引き起こす問題
一見「乳歯が残っているだけ」と思われがちですが、実際にはさまざまなトラブルの原因になります。
- 歯並びの乱れ
永久歯と乳歯が並んで生えてしまうことで、歯の位置がずれてしまいます。その結果、かみ合わせが悪くなり、顎や歯に負担がかかります。 - 歯垢・歯石の付着増加
歯が二重に並ぶと食べかすがたまりやすくなり、歯垢や歯石が急速に形成されます。これは歯周病の大きな原因となります。 - 歯周病のリスク上昇
歯周病は単なる口臭や歯茎の炎症だけでなく、進行すると顎の骨が溶けたり、心臓や腎臓など全身の病気に波及することがあります。 - 痛みや違和感
乳歯と永久歯が干渉することで、咀嚼時に痛みを感じたり、硬いものを噛めなくなることがあります。
◆ 実際の症例
犬の8歳の子の健康診断で「歯石がついていますね」と指摘されました。
普段は歯みがきができず、デンタルガムだけでケアしていましたが、やはり歯ブラシに勝るものはありません。
そこでスケーリングを行うために歯のレントゲンを撮影したところ、思いがけず「乳歯の遺残」が見つかりました。
下の写真の赤丸部分を見ると、そこだけ歯ぐきが下がって歯石がついています。

赤丸の部分を実際にレントゲンで確認すると、乳歯が隠れていました(緑の丸)。もちろん、乳歯は抜歯しました。また、生えてくるはずの永久歯が欠歯でした。

◆ 飼い主さんが気づくサイン
乳歯遺残は口の中をよく見ないと気づけないことも多いですが、以下のようなサインがある場合は要注意です。
- 前歯や犬歯が二重に生えている
- 口臭が強くなってきた
- ドライフードを食べにくそうにしている
- よく口を気にする、前足で顔をこする
これらの症状があれば、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
◆ 乳歯遺残の治療
基本的には 乳歯を抜歯すること が必要です。特に永久歯が正しく生えてきているにもかかわらず乳歯が残っている場合、自然に抜けることはほとんどありません。放置すればするほど歯周病や不正咬合のリスクが高まります。
抜歯は全身麻酔で行うため、若いうちに避妊・去勢手術と合わせて処置するケースも多いです。
◆ 健康診断で早期発見を
乳歯遺残は飼い主さんが見ても気づかないことがあります。特に奥歯や下の犬歯は見逃されやすいため、動物病院での口腔チェックが非常に大切です。
当院の健康診断では、歯や口腔内の状態も詳しくチェックします。早期に乳歯遺残を発見できれば、将来の歯周病や咬合異常を予防することができます。
また、歯だけでなく、心臓や腎臓などの臓器のチェックも同時に行うことで、全身の健康を守ることができます。乳歯遺残のような小さな異常が、大きな病気の早期発見のきっかけになることもあるのです。
◆ まとめ
乳歯遺残は「よくあること」と思われがちですが、実際には放置すると歯周病や不正咬合といった深刻なトラブルにつながります。早期に見つけて処置を行うことが、愛犬・愛猫の一生の健康に直結します。
そのためにも、定期的な健康診断を受けて、歯や全身の状態をチェックしてあげましょう。イース動物病院では、年齢やライフステージに合わせた健康診断プランをご用意しております。ぜひお気軽にご相談ください。
大切な家族であるワンちゃん・ネコちゃんの健康を、私たちと一緒に守っていきましょう!