愛犬が歩けなくなる前に知っておくべき!前十字靭帯断裂の危険性について~整形疾患は身近に⁈~
こんにちは!東京都大田区大森西にあります、イース動物病院です!
最近寒くなってきましたが、急に走り出したりしたら、急に後ろ足をびっこ引いてる!そんな事ありませんか?実はそれ、前十字靭帯断裂かも?!
犬の前十字靭帯(ACL)断裂は、ペットとして飼われている犬において非常に一般的な怪我の一つです。この病気は、特に中型犬や大型犬、そして高齢犬に見られやすいです。前十字靭帯は膝関節の安定性に重要な役割を果たしており、その断裂は犬の生活の質を大きく低下させる可能性があります。この記事では、犬の前十字靭帯断裂について詳しく説明し、その原因、症状、治療方法、予防方法について探ります。
1. 前十字靭帯とは?
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament, ACL)は膝関節(膝の部分)にある二つの靭帯の一つで、膝の安定性を保つために重要な役割を担っています。前十字靭帯は、脛骨(下腿の骨)と大腿骨(太ももの骨)を結びつけ、膝関節が前後に動かないようにします。犬が走ったり、跳ねたり、急に方向転換をしたりする際に、前十字靭帯は大きな力がかかります。
2. 前十字靭帯断裂の原因
犬の前十字靭帯が断裂する原因にはいくつかの要因があります。代表的なものは以下の通りです。
(1) 外的な衝撃
例えば、急激な運動や不安定な地面での動き、転倒などが原因で靭帯が断裂することがあります。特に活発に走り回る犬やスポーツドッグは、膝に強い負荷をかけるため、前十字靭帯を傷つけやすいです。
(2) 遺伝的要因
特定の犬種では、前十字靭帯断裂が遺伝的に多く見られる傾向があります。例えば、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、シェパード、ピットブルなどの犬種は、この疾患にかかりやすいとされています。これらの犬は膝関節の構造が遺伝的に弱いことがあるため、断裂が発生しやすいです。
(3) 高齢による靭帯の劣化
犬が高齢になると、靭帯や関節が劣化しやすくなります。加齢によって関節内の滑液が減少し、摩擦が増えるため、靭帯への負担が大きくなります。このため、年齢が進むにつれて前十字靭帯断裂のリスクが高まります。
(4) 肥満
肥満の犬は体重が膝に余分な負荷をかけるため、靭帯を傷つけやすくなります。過剰な体重は関節に対して不自然な圧力をかけ、靭帯が断裂する原因となることがあります。
3. 前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯断裂をした場合、犬は以下のような症状を示すことが一般的です。
(1) びっこを引く
最も顕著な症状の一つは、犬が片足をかばうように歩く、またはびっこを引くことです。痛みや膝の不安定さが原因で、断裂した足をかばうようになります。
(2) 足を使わない
犬は断裂した足をほとんど使わないことが多く、歩く際にその足を浮かせていることがあります。これは、足にかかる痛みや不安定さを避けるためです。
(3) 膝を舐める、または噛む
膝の痛みが原因で、その部分を舐めたり噛んだりすることがあります。これは、犬が痛みを和らげようとする自然な反応です。
(4) 足の筋力低下
時間が経過すると、断裂した足を使わないことで筋力が低下します。筋肉が萎縮するため、歩行がさらに困難になります。
4. 診断
前十字靭帯断裂が疑われる場合、獣医師はまず視診や触診を行い、膝関節に異常がないかを調べます。その後、以下のような検査が行われます。
(1) 関節の動きの確認
獣医師は犬の膝を動かして、前十字靭帯が損傷しているかどうかを確認します。特に、膝関節を前後に動かしたときに不安定であれば、断裂の可能性が高いです。
(2) X線検査
X線を使って膝関節を撮影し、骨の状態を確認します。前十字靭帯の損傷そのものはX線では直接確認できませんが、関節に異常がないかや、関節炎が進行していないかを見るために重要です。
(3) MRIやCTスキャン
最も正確に靭帯の断裂を診断するためには、MRIやCTスキャンが有効です。これらの検査で軟部組織(靭帯など)の状態を詳細に確認することができます。
5. 治療法
前十字靭帯断裂の治療方法は、犬の年齢や体重、断裂の程度によって異なります。治療には主に保存療法と手術療法があります。
(1) 保存療法
軽度の断裂や手術が不可能な場合、保存療法が選択されることがあります。保存療法では、以下のような方法が取られます。
- 安静:運動を制限し、犬に安静を保たせます。
- 抗炎症薬:炎症を抑えるための薬を投与します。
- リハビリ:筋力を保つためのリハビリを行います。
- 体重管理:肥満が原因の場合、体重を減らすための食事管理を行います。
(2) 手術療法
前十字靭帯断裂が重度の場合や、保存療法では改善が見込めない場合は、手術が必要です。手術にはいくつかの方法がありますが今回はこちらをご案内します。
- TPLO(Tibial Plateau Leveling Osteotomy)手術:脛骨の角度を調整し、膝関節の安定性を確保する手術です。この方法は成功率が高いとされています。
手術後は、リハビリが必要となります。リハビリは筋力回復や関節の可動域を取り戻すために重要です。
6. 予防方法
前十字靭帯断裂を完全に予防することは難しいですが、いくつかの方法でリスクを減らすことができます。
(1) 適度な運動
犬の健康を保つためには、適度な運動が重要です。しかし、過度な運動や急な動きは前十字靭帯に負担をかけることがあるため、バランスの取れた運動を心がけましょう。
(2) 体重管理
肥満は前十字靭帯断裂の大きなリスク要因です。適切な体重を維持することで、膝への負担を減らすことができます。
(3) サポートサプリメント
関節の健康をサポートするために、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントを使用することが有効な場合があります。これらは関節軟骨の維持を助け、靭帯の健康を保つ助けになります。
結論
犬の前十字靭帯断裂は、特に中型犬や大型犬、または高齢の犬に多く見られる疾患です。早期に適切な診断を受け、治療を行うことで、犬の生活の質を改善することができます。また、予防に関しても、適切な運動や体重管理、関節の健康をサポートする方法を実践することで、リスクを減らすことが可能です。愛犬の健康を守るために、前十字靭帯断裂について理解し、予防や治療に取り組むことが重要です。
当院では毎週月曜日に整形専門外来を行っています。
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1からご説明をさせていただき、ゆっくりとその問題をその子にあった方法を考えさせていただきます。