年1回の麻酔下スケーリングで死亡リスクが下がる!?

スケーリング

こんにちは、大田区大森イース動物病院です。「スケーリング」という言葉をご存知でしょうか?これは「歯石除去」のことを指します。人間の歯科医療では、3か月に1回程度の口腔内クリーニングが一般的ですが、犬や猫の場合はどうでしょうか?

犬や猫のスケーリングや口腔内クリーニングは、人間とは違い、基本的に全身麻酔が必要です。その理由として、「痛みがあるため、じっとしているのが難しい」「長時間押さえつけられることが苦痛」「処置中に動いてしまうと危険」などが挙げられます。

最新の研究によると、1歳の犬の90%が歯周病を罹患していると言われています。しかし、全身麻酔が必要だと聞くと、どうしても抵抗を感じて避けてしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか?

「うちの子は毎日歯みがきしてるから大丈夫」 「毎日はしていないけど、そんなに臭いも気にならないし」 「ご飯も食べられてるし、気にしてる様子もないから大丈夫じゃないの?」

若いうちは特に歯周病によるトラブルは起きにくいので、このように感じるのは当然です。しかし、定期的な麻酔下のスケーリングが寿命を延ばすかもしれないという報告があるとしたら、どうでしょうか?

興味深い研究結果

Journal of American Animal Hospital Associationの2019年5、6月号に掲載された記事で、非常に興味深い研究結果が報告されました。この研究では、アメリカの一次診療施設に来院した237万頭の犬を調査し、体格や犬種、体重、避妊去勢の有無、動物病院への来院頻度、歯科スケーリングの頻度と寿命との関連性を評価しています。その結果、以下の知見が得られました。

  • 体格は小さいほど寿命が長い
  • 雑種犬の寿命は純血犬より長い
  • 避妊しているメス、去勢しているオスは、そうでない犬よりも寿命が長い
  • 年1回の歯科スケーリングは死亡リスクを18.3%低下させる

つまり、「1年に1回全身麻酔をかけて歯科スケーリングを行っていた犬の方が、そうでなかった犬に比べ長生きをした」という報告です。

デンタルケアの重要性

この研究によるデータはあくまで一つの結果ですが、スケーリングが寿命に関連している可能性を示唆しています。犬は1歳で90%が歯周病にかかると言われていますので、1歳未満から歯磨きやデンタルガム、サプリメントなどのデンタルケアを開始することが重要です。また、獣医師と麻酔下でのスケーリングについてもしっかり相談し、『健康で長生き』を目指しましょう。

当院では、麻酔下のスケーリングはもちろん、ご自宅でのデンタルケア指導や歯磨き教室の開催(※)など、予防歯科に力を入れています。「歯磨きが難しくてできない」「今の歯の状態を確認したい」などのお悩みに対し、健康な歯を維持するための各種アドバイスを行っていますので、ぜひご相談ください。

参考文献

Risk Factors Associated with Lifespan in Pet Dogs Evaluated in Primary Care Veterinary Hospitals:JAAHA May/Jun 2019