「猫の歯が伸びてきた?それ、歯の病気かもしれません」
こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。日常診療の中でも、飼い主さまから「最近、歯が伸びてきた気がする」「口を閉じていても歯が見える」といったご相談を受けることがあります。特に猫では見落とされて進行しているケースが多く、気づいた時にはすでに歯周病が重度になっていた、ということも少なくありません。
本記事では、猫を中心に、犬にも共通する歯の伸びてしまう原因・メカニズム・進行・治療方法・予防法について詳しく解説いたします。口の違和感は行動に出にくく、特に猫は痛みを隠す傾向があるため、ぜひ最後までごご覧ください。
🦷歯が伸びる?
実は、歯が伸びてしまうのではなく、何らかの理由により歯が本来の位置より伸び出してしまう状態です。その様子を医学用語で歯の挺出と言います。
▼例
・噛み合わせが合わず片側にだけ力がかかる
・咬み合わせる歯が欠損し、反対側の歯が伸びる
・歯周病で支えている骨や歯肉が減る
歯は歯を支えている骨と歯の根っこの歯根膜に支えられています。しかし、その土台が失われると、歯が下の方向(あるいは上方向)へじわじわ移動し、結果的に見た目として“飛び出した”状態になります。
特に猫で多いのは、牙である犬歯の挺出です。長く伸びてくると、口唇に引っかかったり、皮膚に食い込んだりして炎症や痛みを伴うことがあります。
🦷猫で歯の挺出が多いのは何故?
犬に比べ猫で発生率が高い理由には以下の特徴があります。
●①猫は犬歯が非常に重要な機能を持つ
猫は本来、捕食のため犬歯に依存した構造を持ちます。犬歯が強い分、骨吸収が始まると逆に挺出が目立ちやすくなります。
●②猫は歯周病の進行が早い
特に
✔口内炎体質の子
✔慢性腎臓病の猫
は、組織の炎症や免疫反応の影響で歯肉退縮(歯ぐきが下がる)が急速に進行します。
●③咬耗(擦り減り)が少ない
犬は噛む行動が多く、歯に摩耗が起こりやすいですが、猫は咀嚼時間が短いため摩耗が進みにくいです。
そのため、一度挺出が始まると見た目の変化がより際立ちます。
🦷実際の猫の犬歯挺出症例写真
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▼症例写真(猫・犬歯挺出)
写真の赤丸で囲った歯を見ると、長く飛び出ているのがわかります。

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参考に、以下の写真が猫ちゃんの正常な犬歯の長さになります。

🦷歯が挺出すると起こる問題って?
歯が伸びるだけなら問題ないと思われるかもしれませんが、実際には様々なトラブルを生みます。
●①口唇や歯肉に慢性刺激
・口元が濡れている
・よだれが増えた
・口角にただれ
特に犬歯が長くなると、上唇内側に刺さることがあります。
●②痛み
猫は痛みを隠すため、以下の行動がサインになります
✔寝る時間が長くなる
✔毛づくろいが減る
✔カリカリを避けてウェット食を好む
✔唸り声が増える
●③歯周病の悪化
挺出=支える組織が弱い状態のため、歯周病進行の証です。
放置すると歯の動揺が強まり、最終的に抜けてしまうこともあります。
🦷歯の挺出の治療方法はあるの?
▼①歯周病治療
・歯石除去
・歯肉の炎症改善
・抗菌処置
※スケーリング時は麻酔下で実施します。
▼②抜歯
挺出した歯を残すことが逆に悪影響の場合があります。
特に
・反対咬合歯が存在しない
・すでに高度に動揺
・周囲骨が吸収
この場合は抜歯によって痛みが改善します。
▼③咬合調整が必要なケース
犬では咬合異常の場合歯科専門病院にて矯正的処置を検討しますが
猫の場合は抜歯が第一選択となることが多いです。
🦷歯の挺出は予防できる?
対策の基本は以下3つです。
①定期的な口腔チェック
最低でも 半年に1回 推奨
(中高齢猫は3〜4ヶ月に1回)
②歯石蓄積前のプロケア
特に猫の犬歯周囲は歯石が溜まりやすいです。
③口内炎体質の猫では早期治療
血液検査・口腔内の経過観察が重要です。
🦷来院をおすすめしたい症状
以下にひとつでも当てはまれば受診を強く推奨します。
✔歯が以前より長く見える
✔片側の犬歯だけ伸びている
✔口角が濡れている
✔口臭が強い
✔ごはんを残す・固いものを嫌がる
✔歯ぐきが赤い
✔口を触ると嫌がる
これらはすべて歯周組織のダメージのサインです。
🦷まとめ:猫こそ早期発見が重要です
歯の挺出は、歯が勝手に伸びているのではなく、
支える骨と歯肉が失われている異常状態です。
猫は痛みを隠します。
進行しても見た目以外の症状を出さないことが多いです。
ですが、歯が挺出してしまっている時点で、
口腔環境はすでに悪化しています。
適切な治療を行えば
●痛みが改善
●口臭軽減
●食欲回復
●予後改善
が期待できます。
特に 犬歯の変化はわかりやすい“SOS” です。
「うちの猫の犬歯が長くなってきた気がする」
「片側だけ飛び出しているように見える」
そんな時はぜひ早めに大田区大森のイース動物病院ご相談ください。
歯周病は進行を止めることができ、
適切に処置すれば再発を減らすことも可能です。
