犬や猫の歯石取り(スケーリング)は早めのうちに!健康寿命を守るための大切なケア

犬や猫の口の中をのぞいたとき、「なんだか歯が黄色い」「口が臭う」と感じたことはありませんか? それは歯垢や歯石のサインかもしれません。歯の汚れを放置すると、見た目だけでなく健康にも悪影響を及ぼすことがあります。今回は、スケーリング(歯石除去)を早めに行う重要性や、日常ケアのポイントについて詳しくご紹介します。


■ 歯石はいつの間にかたまる

犬や猫の歯垢は、人間よりもずっと早く歯石になります。歯垢が付着してからわずか3~5日ほどで硬い歯石に変化するといわれています。特にドライフードだけを食べていても、唾液中のミネラルと混ざることで、歯の表面に頑固な石のような汚れがついてしまいます。

一度歯石になると、もう自宅での歯みがきでは取ることができません。歯石の表面はザラザラしているため、さらに汚れや細菌が付きやすくなり、悪循環に陥ります。これが「口臭」や「歯周病」へとつながるのです。


■ 歯周病が怖い理由

歯周病は、単なる口のトラブルではありません。歯ぐきが赤く腫れ、出血したり、歯がぐらぐらしたりするだけでなく、重症化すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまうこともあります。さらに、歯周病菌が血液を通じて全身に回ると、心臓・肝臓・腎臓などの臓器に炎症を起こすリスクもあるのです。

特にシニア期の犬や猫では、歯周病が原因で食欲が落ち、栄養不足になったり、持病が悪化したりするケースもあります。口の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながるのです。


■ スケーリングとは?

スケーリングとは、動物病院で行う歯石除去処置のことです。一般的には全身麻酔下で、専用の超音波スケーラーという機械を使って歯石を丁寧に取り除きます。麻酔をかける理由は、処置中に動物が動いてケガをしないようにするためと、歯の表面だけでなく歯ぐきの中(歯周ポケット)までしっかりクリーニングするためです。

また、スケーリングの後にはポリッシング(研磨)という工程で歯の表面をなめらかにし、再び歯垢がつきにくくします。処置後は驚くほど歯が白くなり、口臭も改善することが多いです。


■ 「まだ若いから大丈夫」は危険!

若いうちは歯石があまり目立たないこともありますが、2〜3歳頃からすでに歯周病の兆候が見られる犬猫も少なくありません。 特に小型犬(チワワ、トイプードル、ヨークシャーテリアなど)や短頭種(ペルシャ猫など)は歯並びが密で、歯垢がたまりやすい傾向があります。

歯周病はゆっくり進行するため、初期のうちは痛みや違和感が分かりにくいものです。しかし気づいたときにはすでに重度になっており、抜歯が必要になるケースもあります。
そのため、「見た目がきれいだからまだ大丈夫」と油断せず、若いうちから定期的にチェックして早めにスケーリングを検討することが大切です。


■ スケーリングを行う目安

動物病院では、定期健診やワクチンの際に歯の状態を確認してくれます。歯ぐきの赤みや口臭、歯石の付き具合などを見て、必要に応じてスケーリングを勧められることがあります。
目安としては次のような状態です。

  • 歯が黄色~茶色に変色している
  • 口臭が強くなってきた
  • 歯ぐきが赤い、出血している
  • よだれが増えた、口を触ると嫌がる
  • 食べ方が変わった、硬いものを避ける

これらのサインが見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。


■ スケーリング後のケアも大事

スケーリングをした後、そのまま放置してしまうと、またすぐに歯垢がついてしまいます。処置後のホームケアが何より重要です。
理想的なのは毎日の歯みがき。最初は嫌がる子も多いですが、ガーゼや指サックタイプの歯ブラシから慣らしていきましょう。歯みがきペーストを使うと風味で抵抗が少なくなります。

どうしても歯みがきが難しい場合は、デンタルガム、飲み水に混ぜるデンタルケア液、歯石予防フードなどを併用すると良いでしょう。定期的に病院で歯の状態をチェックしてもらうことも忘れずに。


■ 麻酔が心配なときは?

スケーリングは麻酔下で行うため、「高齢だから心配」という飼い主さんも多いです。しかし、最近では事前に血液検査や心電図などでリスクをしっかり評価し、安全に行うケースが増えています。
また、歯石を放置することで生じる痛みや感染リスクの方が、結果的に体への負担が大きくなることもあります。信頼できる獣医師と相談し、リスクとメリットを理解したうえで最適なタイミングを選びましょう。


■ まとめ:歯の健康が長生きの秘訣

犬や猫の歯のケアは、見た目の美しさだけでなく「健康寿命」を延ばすために欠かせません。
スケーリングを早めに行うことで、歯周病の進行を防ぎ、痛みのない快適な毎日を過ごすことができます。

日々の歯みがき習慣と、年に一度の口腔チェック。
この2つを意識するだけで、愛犬・愛猫の笑顔と健康を長く守ることができるでしょう。

イース動物病院では歯科の専門外来を行っております。予約制になっているので詳しくはご相談ご連絡ください。