【要注意】犬猫の歯周病、放置すると骨が溶ける怖い病気です!


こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。
今回は、犬や猫の「歯周病」についてお話しします。
「歯周病」と聞くと、「口が臭くなるだけ」「高齢になったら仕方ない」と思われる方も多いかもしれません。
しかし実はこの病気、進行すると「あごの骨が溶ける」という、とても恐ろしい病気なのです。

大切なご家族であるワンちゃん、ネコちゃんの命を守るために、ぜひ最後まで読んでください。


歯周病ってどんな病気?

歯周病とは、歯を支える「歯周組織(歯ぐき、歯根膜、歯槽骨など)」に炎症が起こり、破壊されていく病気です。
初期段階では「歯肉炎」として歯ぐきの赤みや腫れがみられますが、進行すると「歯周炎」となり、やがて歯を支える骨(歯槽骨)まで溶けていきます。

歯周病の症状

以下のようなサインは要注意です。

  • 口臭がきつい
  • 歯ぐきから出血している
  • 歯がグラグラしている
  • 食べづらそうにしている
  • よだれが多い
  • 口元を気にする仕草が多い
  • 片側だけで噛んでいる

これらの症状がある場合、歯周病がすでにかなり進行している可能性があります。


骨が溶けるって本当?歯周病の末期

歯周病が進行すると、歯を支える「歯槽骨(しそうこつ)」が破壊されていきます。
つまり、「歯を支えている骨そのものが溶けてなくなる」状態になります。
これが、歯周病が「怖い病気」と言われる最大の理由です。

骨が溶けてしまうと、以下のような深刻な状態に陥ることもあります。

  • 歯が自然に抜け落ちる
  • 歯の根元から膿が出る(根尖膿瘍)
  • 口と鼻がつながる(口腔鼻腔瘻)
  • 顎の骨が折れる(病的骨折)

特に小型犬や猫では、顎の骨が薄いため、歯周病が原因で「ごはんを食べていたら突然あごが折れた」というケースも珍しくありません。

実際の症例

下の写真を見ると、歯石がついていますが、ぱっと見そこまで重度には見えません。


オレンジ色のマル部分の歯を歯科レントゲンで撮影してみると、

緑色のマルの写真になります。骨が溶けてしまい、歯の根っこがみえてしまっています。

その歯に器具を差し込むと、貫通しているのが分かります。残念ながらこの歯は、抜歯処置になります。

歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病は口の中だけの病気ではありません。
炎症によって発生した細菌や毒素が、血流に乗って全身を巡ることで、以下のような臓器にも悪影響を及ぼします。

  • 心臓病(細菌性心内膜炎など)
  • 腎臓病(慢性腎炎の悪化)
  • 肝臓病
  • 糖尿病の悪化

人間でも「歯周病が万病のもと」と言われるように、犬や猫にとっても「命を脅かす病気」になることがあります。


犬猫の歯周病、なぜこんなに多いのか?

歯周病は、犬や猫の約8割が3歳までにかかると言われている非常にありふれた病気です。
理由は以下の通りです。

1. 唾液による自浄作用が弱い

人間と違い、犬や猫は口の中を清潔に保つ力が弱く、細菌が繁殖しやすい環境です。

2. 歯みがき習慣がない

多くの飼い主さんが「うちの子は歯みがきをしていない」というのが現状です。
犬猫も人と同じように、歯みがきをしなければ歯垢がつき、それが石灰化して歯石になります。

3. 食生活の変化

柔らかいフード(ウェットフードやトッピングなど)は歯に残りやすく、歯石の原因になります。


歯周病を予防・早期発見するには?

最も大切なのは「毎日のケア」と「定期的なチェック」です。

● 毎日の歯みがき

理想は毎日、少なくとも週に2~3回以上の歯みがきが推奨されます。
犬猫用の歯ブラシや歯みがきペーストを使って、徐々に慣らしていきましょう。
初めは指で触れるだけでも構いません。

● デンタルガムやおもちゃ

歯みがきが難しい場合は、歯垢を減らす効果のあるガムやおもちゃも活用できます。
ただし「噛むだけで安心」と思わず、あくまで補助的なものと考えてください。

● 動物病院での定期チェック

1年に1回は歯科検診を受けましょう。
特に高齢の子、小型犬種(チワワ、トイプードル、ダックスなど)、猫では注意が必要です。


歯周病の治療法は?

歯周病が進行してしまった場合、以下のような治療が必要となります。

● スケーリング(歯石除去)

全身麻酔下で、歯石をきれいに除去します。
表面だけでなく、歯周ポケット内も徹底的に清掃します。

● 抜歯

歯槽骨が溶けて歯がグラグラしている場合や、膿が溜まっている場合は、抜歯が必要です。
痛みを取り除くためにも重要な治療です。

● 抗生剤・消炎剤の投与

炎症や感染が強い場合には、内服薬を併用することもあります。


まとめ:歯周病は「命に関わる病気」です

歯周病は「ただの口臭」「年のせい」と侮ってはいけません。
放置すると、骨が溶ける・歯が抜ける・あごが折れる・命に関わる病気に発展するという怖い側面を持っています。

逆に言えば、早期に発見し、ケアすれば予防できる病気でもあります。
ぜひ、大切な家族の健康のために、今からできることを始めましょう。


当院では歯科専門外来も行っています。

イース動物病院では、犬猫の歯の健康を守るための**歯科の診察・歯石除去抜歯処置**を行っています。
「ちょっと口臭が気になるかも」「歯石がついてきたかな?」という段階での受診が、愛犬・愛猫の健康寿命を大きく伸ばします。

気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください!