犬猫の歯周炎の怖さと歯みがきの大切さ
こんにちは!東京都大田区大森のイース動物病院です。皆さんは、愛犬・愛猫の「お口の健康」について、どれくらい気にかけていますか?
ペットの歯みがきというと、「嫌がるからできない」「まだ若いから大丈夫」「自然に取れるだろう」などと後回しにしてしまいがちなケアかもしれません。しかし、実は犬猫にとって歯周炎はとても怖い病気です。人間と同じように、あるいはそれ以上に深刻な影響を及ぼすこともあります。
今回は、犬猫の歯周炎の怖さと、毎日の歯みがきの大切さについて、動物病院の視点から詳しくお話ししていきます。
歯周炎とはどんな病気?
歯周炎とは、歯を支える組織(歯ぐき・歯槽骨など)に炎症が起こる病気です。歯の表面に付着した歯垢(プラーク)が原因で、細菌が繁殖し、歯ぐきが赤く腫れたり、出血したりします。進行すると歯を支える骨が溶け、歯がぐらぐらになって抜け落ちてしまうこともあります。
歯周炎の主な症状
- 口臭が強くなる
- 歯ぐきが赤く腫れる
- 歯ぐきから出血する
- 歯がぐらつく
- 食欲が落ちる
- 片側でしか噛まなくなる
- よだれが増える
これらの症状は飼い主さんが気づきにくいことも多く、気づいた時にはかなり進行しているケースが少なくありません。
犬猫は歯周病になりやすい?
実は犬猫は人間よりも歯周病になりやすい動物です。
犬の場合
犬は人間よりも唾液の中の抗菌成分が少なく、さらに歯の並びや口腔内の構造上、食べかすが溜まりやすい傾向にあります。特に小型犬(チワワ、トイプードル、ダックスフンドなど)は顎が小さく歯が密集しているため、歯垢がたまりやすく歯周炎になりやすいのです。統計によると、3歳以上の犬の約80%以上が歯周病を抱えているとも言われています。
猫の場合
猫も歯周病にかかりますが、さらに「歯肉口内炎」といった重症化しやすい病態に進行することもあります。猫の口内炎は痛みを伴い、食事ができなくなるほど重症になるケースもあります。また、ウイルス感染(カリシウイルスや猫白血病ウイルスなど)が関与していることもあります。
歯周炎が引き起こす全身疾患
歯周炎はお口の中だけの病気と思われがちですが、実は全身の健康にも悪影響を及ぼします。細菌が血流に乗って全身を巡ることで、以下のような重大な疾患を引き起こす可能性があります。
- 心臓病(心内膜炎)
- 腎臓病
- 肝臓疾患
- 糖尿病の悪化
- 免疫力低下
つまり、歯周炎の予防はお口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにもつながるのです。
歯周炎の治療は大変!
もしも愛犬・愛猫が歯周炎になってしまった場合、治療は簡単ではありません。
基本的な治療法
- 歯石除去(スケーリング):全身麻酔下で行う必要があります。
- 抜歯:重度の場合は抜歯が必要になることも。
- 抗生物質の投与:炎症や感染を抑えるため。
治療には身体的負担や費用もかかりますし、高齢になってからの麻酔はリスクも伴います。だからこそ「予防」が何よりも大切なのです。
歯みがきの大切さ
では、歯周炎を予防するためには何が一番効果的なのか?
答えはやはり 「毎日の歯みがき」 です。歯垢は食後24〜48時間で歯石に変わってしまいます。歯石になると歯ブラシでは落とせなくなり、病院での処置が必要になります。毎日歯みがきをして、歯垢の段階で除去することが非常に重要です。
歯みがき習慣は子犬・子猫の頃から
歯みがきは成犬・成猫になってから始めるよりも、子犬・子猫のうちから習慣づけた方が断然成功率が高くなります。
まだ乳歯のうちでも、お口を触ることに慣れさせてあげましょう。
歯みがき練習のステップ
- 口元を優しく触ることに慣れさせる
- 歯ぐきを指でマッサージ
- ガーゼで歯を拭う
- 歯ブラシに慣れさせる
- 最後に歯ブラシでしっかり磨く
無理に進めず、少しずつ慣れさせることがコツです。ご褒美のおやつを使って「歯みがき=楽しい」と覚えさせてあげましょう。
歯みがきが難しい子のための補助アイテム
「うちの子は絶対に歯みがきが無理!」という飼い主さんも少なくありません。そんなときは以下のような補助アイテムを活用してみましょう。
- デンタルガム
- 歯みがき用のおやつ
- デンタルジェル・スプレー
- マウスウォッシュ(飲み水に混ぜるタイプ)
- サプリメント
ただし、これらはあくまで補助的なケアです。やはり歯ブラシで磨くのが一番効果的ですので、できる範囲でのチャレンジを続けていきましょう。
動物病院での定期検診を活用しよう
家庭でのケアと並行して、動物病院での 定期的な口腔内チェック もとても重要です。
動物病院では
- 歯周ポケットの深さの確認
- 歯石の付着状況のチェック
- 歯ぐきの炎症の有無
- 歯並びや噛み合わせの確認
など、専門的な視点で診察を行います。特に小型犬・高齢の犬猫は3〜6ヶ月に一度の口腔内検診をおすすめしています。早期発見・早期治療が、歯を長く健康に保つ秘訣です。
実際にあった怖いケース
実際の診療現場でも、歯周炎が重症化してしまった症例をよく目にします。たとえば、
- 歯周病が進行して歯が次々に抜け落ちた
- あごの骨(下顎骨)が溶けて骨折してしまった
- 歯周病が進行し、細菌が血流に乗って心臓に炎症を起こし心内膜炎に。
- 歯槽骨が溶けて口腔鼻腔瘻ができ、鼻水・くしゃみ・膿が慢性的に続く状態に。
- 慢性的な歯周病菌の影響で腎臓に負担がかかり、腎機能が徐々に低下して慢性腎臓病に。
これらはすべて、初期段階での歯みがきと定期検診によって防げた可能性があるケースです。
「たかが歯」と思わず、全身の健康を守るためにも日頃のケアを大切にしてあげましょう。
まとめ
- 歯周炎は犬猫にとってとても怖い病気
- お口だけでなく全身の病気を引き起こす可能性も
- 歯周炎の予防には毎日の歯みがきが最も効果的
- 子犬・子猫のうちからの習慣化が成功のカギ
- 補助アイテムも活用しながら無理なく続けよう
- 動物病院での定期検診も忘れずに
愛犬・愛猫が健康で長生きするためには「歯の健康」が欠かせません。
「まだ若いから大丈夫」ではなく、今日からできる歯みがきを始めてあげましょう!
当院では、お口のトラブルにお悩みのワンちゃん・ネコちゃんと、そのご家族に寄り添いながら、丁寧な診療を心がけています。
ぜひお気軽に大田区大森にあるイース動物病院にご相談ください!