愛犬の肉球の異変に気づいたら?|獣医師が教える原因と対処法

愛犬の肉球に異変を感じた時、「痛がっていないか」「このまま様子を見ても良いのか」と、不安な気持ちになる飼い主様は少なくありません。肉球は犬にとって非常に重要な役割を果たしており、異常があると日常生活や散歩にも支障をきたすことがあります。そのため、肉球の健康を維持することは、愛犬の生活の質(QOL)を守るためにも非常に大切です。

今回は、犬の健康な肉球の特徴と異常サインの見分け方、肉球が赤くなる主な原因、自宅でできるケアと応急処置、そして動物病院を受診すべきタイミングなどを詳しく解説します。

■目次
1.正常な肉球と異常な肉球の違い
2.肉球が赤くなる主な原因
3.自宅でできるケアと応急処置
4.動物病院への相談が必要なケース
5.まとめ

正常な肉球と異常な肉球の違い

肉球は、歩行中の衝撃を吸収するクッションの役割を果たすほか、滑り止めや体温調節など、犬の健康や活動に欠かせない重要な部位です。健康な肉球の特徴と、異常な肉球のサインについて詳しく確認しておきましょう。

<健康な肉球の特徴>

触感:弾力があり、適度に柔らかい。
湿度:軽くしっとりしている(汗腺があるため)。
:均一で自然な色合い(ピンク色や黒色が多い)。
表面:ツルツルしすぎず、適度なザラつきがある。

肉球に以下のような症状が見られる場合、何らかの異常が起きている可能性があります。

<発赤>

肉球やその周辺の皮膚が赤く腫れている場合は、炎症や感染症の可能性があります。

<腫れ>

肉球が大きく腫れている場合、打撲や感染、アレルギー反応が考えられます。

<ひび割れや傷>

乾燥や外的な刺激によってひび割れたり、傷ができたりしている場合があります。

<温度変化>

触れた時にいつもより熱い、または冷たいと感じる場合、炎症や血流の異常が疑われます。

日頃から肉球を触って健康状態を把握しておくことが大切です。観察する際は、足の裏全体をよく見て、肉球の隙間や周囲の皮膚も確認してください。普段から肉球を触られることに慣れさせておくと、トラブルがあった際にもスムーズに対応できます。

肉球が赤くなる主な原因

肉球が赤くなる原因としては、主に以下のようなものが挙げられます。

<外的要因>

夏場に熱いアスファルトを歩いたり、冬場の雪道で融雪剤(塩化カルシウム)が肉球に付着したりすると、肉球が火傷や塩害を受けて赤く腫れることがあります。また、尖った小石やガラス片などで肉球に傷がつくこともあります。

<アレルギー反応>

花粉やハウスダスト、特定の食材、ノミ・ダニなどが原因でアレルギー反応を起こし、肉球が赤く腫れることがあります。これに伴い、痒みや舐め行動が見られることが多いです。

犬や猫にもノミ・ダニアレルギーについてはこちらか

<細菌やカビの感染>

傷口から細菌やカビが感染することで炎症が起こり、肉球が赤くなります。感染症では、赤みのほかに腫れ、膿、痒みなどの症状が見られることがあります。

犬や猫の皮膚病:カビ(真菌感染症)についてはこちらから

<自己免疫疾患>

自己免疫疾患(例:エリテマトーデス)は、免疫系が自分の組織を攻撃してしまう病気で、肉球に潰瘍や赤みが現れることがあります。この場合、他の部位にも症状が出ることが多いです。

<過度な舐め行動>

ストレスや痒みが原因で、犬が肉球を執拗に舐め続けると、炎症や二次感染を引き起こし、赤く腫れることがあります。

<季節や環境による影響>

季節や生活環境の変化も肉球の状態に影響を与えます。たとえば、乾燥しやすい冬場はひび割れが起こりやすく、湿度の高い季節はカビ感染が増える傾向があります。

自宅でできるケアと応急処置

肉球の異常が軽度の場合は、自宅で適切なケアを行うことで改善することがあります。ただし、悪化する場合は速やかに動物病院を受診してください。

<傷口の洗浄>

肉球に傷がある場合は、水道水でよく洗い、汚れや異物を取り除きましょう。感染を防ぐため、清潔なガーゼやタオルで水分を拭き取り、止血が必要な場合は軽く圧迫します。

<保湿クリームの使用>

乾燥やひび割れが見られる場合は、肉球専用の保湿クリームを使用してください。ジェルタイプはべたつきを軽減でき、クリームタイプはしっかり保湿したい場合に適しています。人間用のクリームは成分が犬に適していないことが多いため、使用しないでください。

<散歩時の保護>

夏場の熱いアスファルトや冬場の融雪剤から肉球を守るために、犬用靴下やシューズを使用するのも効果的です。ただし、靴下を嫌がる場合は、無理に履かせずに散歩を控えるなどの対策をとりましょう。

<注意すべき点>

・消毒液やアルコールを直接使用しない(刺激が強すぎるため)
・傷口を放置しない(感染症のリスクが高まる)

<予防のための日常ケア>

・肉球を定期的に観察する習慣をつける
・散歩後に足裏を洗い、清潔を保つ
・冬場は室内でも乾燥しすぎないよう加湿を心がける

動物病院への相談が必要なケース

以下の症状が見られる場合は、速やかに動物病院を受診してください。

<出血や潰瘍がある>

傷口が治らない、または潰瘍が広がっている場合、早急な治療が必要です。

<激しい痛みがある>

歩行を嫌がる、痛みで触ることを嫌がる場合は、深刻な状態である可能性があります。

<腫れが顕著>

肉球全体が大きく腫れている場合、炎症や感染症が進行している可能性があります。

<歩行困難が見られる>

歩き方がおかしい、あるいは完全に歩けなくなっている場合は、直ちに診察を受けましょう。

<症状が改善しない>

数日間ケアを行っても改善しない場合は、基礎疾患や感染症が隠れている可能性があります。

これらは早期に治療を行うことで、痛みを軽減し、回復を早めることができます。また、症状が軽いうちに治療を始めることで、治療費や時間の負担も軽減されます。

まとめ

愛犬の肉球の健康は、生活の質に直結する大切な要素です。日頃から肉球の状態を観察し、異常があれば早めに対応することで、愛犬の健康を守ることができます。特に痛みや腫れ、赤みが強い場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。

 

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