猫の歯が溶ける?吸収病巣について

こんにちは‼東京都大田大森のイース動物病院です。歯が溶ける病気、吸収病巣は、ご存知でしょうか?今日は、吸収病巣の原因・症状・治療法について詳しくお話したいと思います。

1. はじめに

猫の歯科疾患は多岐にわたりますが、その中でも特に「口腔内吸収病巣(FORL: Feline Odontoclastic Resorptive Lesions)」は、比較的多く見られる病気の一つです。この病気は猫の歯が溶けてしまうことを特徴とし、猫自身に強い痛みを伴うことが多いです。発見が遅れると、進行して歯の抜歯が必要になることがあるため、早期の診断と治療が重要です。

2. 口腔内吸収病巣とは?

口腔内吸収病巣は、歯のエナメル質や象牙質が破壊され、最終的には歯が溶けてしまう病気です。特に奥歯に発生しやすく、歯の根元付近から徐々に吸収が進行します。最初は目に見えない部分で進行するため、気付きにくいのが特徴です。

この病気は、自然に起こる現象とされていますが、未だに正確な原因は解明されていません。しかし、何らかの原因で歯の再吸収が活性化し、歯が分解されることが確認されています。

3. 猫の口腔内吸収病巣の原因

FORLの原因は完全には明らかになっていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

  • 加齢:年を重ねた猫ほどFORLにかかりやすい傾向があります。特に7歳以上の猫に多く見られます。
  • 歯の磨耗:硬い食べ物や歯磨きによって歯が磨耗することで、歯の組織が傷つきやすくなることがあります。
  • 栄養不足:カルシウムやビタミンDの不足も歯の健康に影響を及ぼす可能性があります。
  • 遺伝的要因:特定の猫種ではFORLの発生率が高いことが確認されています。例として、シャムやメインクーンなどの猫種が挙げられます。

4. 症状

猫の口腔内吸収病巣は、最初のうちはほとんど症状を示さないことが多いですが、進行すると以下のような症状が見られます。

  • よだれが増える:特に歯が痛む部位に触れるとよだれが多く出るようになります。
  • 食欲不振:食べ物を噛む際に痛みを感じるため、食べるのを嫌がったり、片方の口だけで噛むようになることがあります。
  • 歯茎の腫れや出血:吸収病巣が進行すると、歯茎に炎症が生じ、痛みや出血が起こることがあります。
  • 頭を振る・口を触られるのを嫌がる:痛みがあるため、口の周りを触られるのを避けたり、頭を振ったりする行動が見られることがあります。

5. 診断

口腔内吸収病巣の診断には、歯科用のレントゲン撮影が必要です。目視では確認できない深部で吸収が進行していることが多いため、専門的な設備が整った動物病院での診察が必要です。

また、症状が進行している場合は、口の中を検査するだけでなく、猫の全身状態を確認するために血液検査や健康診断を行うことも重要です。

6. 治療法

FORLの治療は、基本的には抜歯が主な方法となります。以下に、治療方法を詳しく説明します。

抜歯

吸収病巣が確認された歯は、通常、抜歯が最も効果的な治療方法です。病巣が進行すると、歯が自然に溶けてしまうため、放置するよりも早めの抜歯が推奨されます。歯を抜くことで、痛みや不快感を取り除き、病気の進行を止めることができます。

痛みの管理

抜歯後の痛みを管理するために、鎮痛薬や抗炎症薬が処方されることが一般的です。手術後は、猫が快適に過ごせるよう、ストレスの少ない環境を整えてあげることが大切です。

食事の見直し

FORLを防ぐために、食事の見直しも重要です。硬い食べ物を避け、ウェットフードや柔らかいドライフードを与えることで、歯への負担を軽減できます。また、猫用のデンタルケアフードやサプリメントも活用して、歯の健康を維持することが推奨されます。

7. 予防策

FORLは完全には予防できない病気ですが、いくつかの対策を講じることで進行を遅らせることが可能です。

定期的な歯科検診

猫の口腔内の健康を保つために、定期的な歯科検診が不可欠です。特に7歳を過ぎた猫は、少なくとも年に1回の歯科検診を受けることが推奨されます。歯科レントゲンを撮ることで、目に見えない吸収病巣を早期に発見できます。

デンタルケア

歯磨きや口腔ケア製品の使用は、歯の健康維持に役立ちます。猫専用の歯磨き粉や歯ブラシを使って、口腔内を清潔に保つことが、吸収病巣の予防に有効です。毎日のケアが難しい場合は、口腔内スプレーやデンタルジェルの使用も効果的です。

食事管理

歯に優しいフードを選ぶことも、FORLの予防に役立ちます。猫の歯に過度な負担をかけないように、ウェットフードややわらかい食事を中心に与えると良いでしょう。また、食事にデンタルケア効果のある成分を含むものを選ぶことも効果的です。

8. おわりに

猫の口腔内吸収病巣は、放置すると猫に大きな苦痛を与える深刻な病気です。しかし、早期発見と適切な治療を行うことで、症状の進行を止め、猫が快適に過ごせるようにすることが可能です。定期的な歯科検診や日々のデンタルケアを行い、大切な猫の健康を守りましょう。