~犬と猫と腸活と④~
こんにちわ。イース動物病院です。
シリーズでお伝えしているワンちゃんネコちゃんへの腸活の効果についても4回目をむかえました。
今回は腸内酸素とディスバイオシスの関係についてお話します。
腸内酸素とディスバイオシスの関係について
腸内にはたくさんの種類の細菌が共存しあって腸内環境を維持していることは以前にもお伝えしました。
理想の比率は善玉菌(2):悪玉菌(1):その他の菌(7)でしたよね。そのバランスが崩れた状態をディスバイオシスと言いました。
腸内細菌叢を乱す要因として腸内酸素の影響も考えられています。
腸内酸素が及ぼす影響
腸内酸素の話の前に、細菌と酸素の関係についてお話します。 細菌の分類には、その「生育に酸素を利用するかどうか」で、ざっくりと偏性嫌気性菌、通性嫌気性菌、偏性好気性菌に分かれています。
- 偏性嫌気性菌:酸素のない環境でしか生育できない菌
- 通性嫌気性菌:酸素の有無に関わらず生育できる菌
- 偏性好気性菌:酸素のある環境でしか生育できない菌
身体にとって有益な酪酸菌やビフィズス菌は偏性嫌気性菌(酸素のない環境で生育する菌)に分類され、乳酸菌は通性嫌気性菌に分類されます。
一方で、身体にとって有害となりうる大腸菌やブドウ球菌も通性嫌気性菌に分類されます。
また、少数ではありますが、腸内においても偏性好気性菌(酸素のある環境で生育する菌)が存在します。
よって、腸内酸素レベルが上昇すると、身体にとって有益な酪酸菌やビフィズス菌の生育が困難となり、相対的に悪玉菌有利な環境(=ディスバイオシス)になります。
さらに、腸内酸素レベルの上昇により、本来、少数であったはずの好気性菌が増加します。これもまた腸内細菌叢の構成を変化させ、ディスバイオシスの原因となります。
腸内酸素レベルが上昇する原因は?
腸内酸素が増える原因にはいくつかの要因があります。
代表的なものとして
1、炎症
腸の炎症があると、血流が増加し、酸素の供給も増える事があります。炎症性腸疾患などがこの原因となる事があります。
2、 酸素供給の増加
例えば、腸内の血管透過性が変化する事で酸素が腸内に漏れ出しやすくなる事があります。
3、食事の影響
特に高脂肪食や高糖質食は腸内環境を変え、酸素レベルの変動を引き起こす可能性があります。
4、 薬物
非ステロイド性抗炎症薬や特定の化学療法薬などの長期投与は、腸のバリア機能を損なわせ、酸素が腸内に入りやすくなることがあります。また、抗生物質の投与により腸内細菌を殺すことで腸内フローラのバランスを崩すことがあります。これにより酸素を利用する好気性菌が増え、腸内の酸素レベルが上がる可能性があります。
などが挙げられます。
お腹を壊しやすい子や、ジャーキーなどのオヤツばかり食べる子は腸内酸素レベルも高くなる傾向にあると思われます。
腸内の酸素濃度を減らす方法
では、腸内の酸素を減らすにはどのようにすればよいでしょうか?
キーワードは「短鎖脂肪酸」です。
短鎖脂肪酸は前回のプレバイオティクスでお話した通り、酪酸菌などの善玉菌が食物繊維(オリゴ糖など)をもとに発酵(酸素を使わない代謝)をおこなう事で生成されます。
この短鎖脂肪酸は腸粘膜の健康維持や制御性T細胞の活性による過剰炎症の抑制といった作用がありますが、実は腸内酸素レベルを減らす上でも重要となります。
短鎖脂肪酸は酸性の物質であり、これが腸内に蓄積する事で腸内pHが低く(酸性)保たれます。
酸性環境は酪酸菌やビフィズス菌など嫌気性菌(酸素を嫌う菌)が生育しやすい環境となる一方で 好気性菌(酸素を利用する菌)の活動が抑制されます。
その結果、好気性菌による酸素消費量が減り腸内酸素レベルも低下します。
さらに、酸性環境は酸素の溶解度を低下させ、酸素が腸内に拡散する速度を抑える事で、腸内の酸素濃度が低くなります。
また、短鎖脂肪酸の1種である酪酸は大腸の粘膜上皮細胞の代謝を促して、血管から送られてくる酸素を消費させ、大腸内の酸素濃度を低下させることがわかっています。
まとめ
・ディスバイオシスの原因の1つとして腸内酸素レベルの上昇が挙げられる。
・腸内酸素レベルが上がると、身体に有益な嫌気性菌が減り、相対的に有害菌が有利な状態となる。
・腸内酸素レベルを下げるには短鎖脂肪酸が有効。